この記事の要点
- OFDMA は直交する多数のサブキャリアを利用者ごとに割り当てる多元接続。SC-FDMA は同じ枠組みで、送信波形をシングルキャリアに近づけた方式です。
- LTE では下りが OFDMA、上りが SC-FDMA。上りに SC-FDMA を使う理由は、ピーク電力を抑えて端末の電力増幅器を効率よく動かせるからです。
- 5G NR の上りは CP-OFDM と DFT-s-OFDM(SC-FDMA と同系統)の両方が規定され、使い分けられます。「5Gの上りは〇〇だけ」という言い切りに注意。
- モバイル2級では出題カテゴリ「ワイヤレス通信の原理とネットワーク技術」(15%)に当たります。記事の最後に独自の確認問題3問を置きました。
OFDMAとSC-FDMAとは?一言でいうと何が違う?
OFDMA(直交周波数分割多元接続)は「直交する多数のサブキャリアを、利用者ごとに割り当てて分け合う方式」です。SC-FDMA(シングルキャリア周波数分割多元接続)は「OFDMA と同じくサブキャリアを使いながら、送信する信号の形をシングルキャリアに近づけた方式」です。LTE では下り(基地局→端末)に OFDMA、上り(端末→基地局)に SC-FDMA を使います(3GPP TS 36.211 ほか、確認 2026-09-27)。
どちらも「周波数を細かく刻んで、まとめて使う」という発想は同じです。違いは端末が送る信号の作り方にあります。SC-FDMA は、データを DFT(離散フーリエ変換)で周波数方向に広げてからサブキャリアへ載せます。このため DFT 拡散 OFDM(DFT-s-OFDM) とも呼ばれます。試験では名前が2つあることを知らないと、同じものを別物だと判断してしまいます。
| 観点 | OFDMA | SC-FDMA |
|---|---|---|
| LTEでの使いどころ | 下り(基地局→端末) | 上り(端末→基地局) |
| 信号の作り方 | データを各サブキャリアに直接載せる | データをDFTで広げてからサブキャリアに載せる |
| ピーク電力と平均電力の比(PAPR) | 大きくなりやすい | OFDMAより小さく抑えやすい |
| 利点 | 周波数ごとに柔軟に割り当てられ、マルチパスに強い | 端末の電力増幅器を効率よく使え、電池の持ちに有利 |
| 受信側の負担 | 端末側の受信処理は比較的単純 | 基地局側で周波数領域の等化などの処理が要る |
← 表は横にスクロールできます →
表の上から2行を言えれば、4択の多くの選択肢を切れます。残りの行は「なぜそう設計したのか」を説明する材料です。
直交する多数のサブキャリアとは?なぜ互いに干渉しないのか
OFDM の考え方は、1本の太い搬送波で速く送る代わりに、多数の細い搬送波(サブキャリア)に分けて、それぞれをゆっくり送ることです。1つの記号(シンボル)を送る時間が長くなるので、建物などで反射して遅れて届く電波(マルチパス)の影響を受けにくくなります。
「直交」とは、隣り合うサブキャリアのスペクトルが重なっていても、受信側で1本ずつ取り出すと他のサブキャリアの成分が打ち消し合う関係のことです。サブキャリアの間隔をシンボル時間に合わせてそろえることで成り立ちます。このため、サブキャリアの間にすき間(ガードバンド)を空けずに詰めて並べられ、周波数を無駄なく使えます。
LTE のサブキャリア間隔は 15kHz で、周波数方向に 12 本(180kHz)のまとまりをリソースブロックとして割り当ての単位にしています(3GPP TS 36.211、確認 2026-09-27)。5G NR はサブキャリア間隔を 15kHz×2のべき乗(15・30・60・120kHz など)から選べる設計です(3GPP TS 38.211、確認 2026-09-27)。
各シンボルの末尾の一部を先頭にコピーして付ける区間を CP(サイクリックプレフィックス) と呼びます。CP の長さより短い遅れで届く電波なら、前のシンボルが次のシンボルに食い込む干渉(シンボル間干渉)を吸収できます。CP は誤り訂正のための符号ではない点に注意してください。
| 方式 | 利用者を分けるもの | 代表的な使われ方 |
|---|---|---|
| FDMA | 周波数 | 第1世代のアナログ方式 |
| TDMA | 時間(タイムスロット) | 第2世代のGSM・PDC |
| CDMA | 拡散符号 | 第3世代のW-CDMA・CDMA2000 |
| OFDMA | サブキャリアと時間の組合せ | LTE・5G NRの下り、Wi-Fi 6 |
← 表は横にスクロールできます →
OFDM と OFDMA は別の言葉です。OFDM は直交サブキャリアで送る伝送方式、OFDMA はその OFDM のサブキャリアを複数の利用者で分け合う多元接続方式です。Wi-Fi でも、OFDMA は Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)の特長として挙げられています(Wi-Fi Alliance、確認 2026-09-27)。世代ごとの方式の流れは移動通信の世代(1G〜5G)で整理しています。
なぜ上りだけSC-FDMAを使うのか?電力効率との関係は?
OFDMA の弱点は PAPR(ピーク電力対平均電力比)が大きくなりやすいことです。多数のサブキャリアの波がたまたま同じ向きにそろった瞬間、振幅が大きく跳ね上がります。送信機の電力増幅器は、そのピークでも信号をゆがめないように余裕(バックオフ)を取って動かす必要があり、平均の出力に対して電力の無駄が増えます。
基地局は電源と装置の規模に比較的余裕がありますが、スマートフォンは電池で動き、発熱にも制約があります。そこで LTE の上りでは、DFT で広げてからサブキャリアに載せることで、時間波形をシングルキャリアの伝送に近づける SC-FDMA を採用しました。その分、基地局側で周波数領域の等化などの受信処理が必要になりますが、処理能力のある基地局に負担を寄せる設計といえます。
5G NR では、下りは CP-OFDM、上りは CP-OFDM と DFT-s-OFDM の両方が規定されています(3GPP TS 38.211、確認 2026-09-27)。一般に、送信電力に余裕のないセルの端では DFT-s-OFDM、電波状態がよく高速に送りたい場面では CP-OFDM、という使い分けがされます。
| リンク | LTE | 5G NR |
|---|---|---|
| 下り | OFDMA(CP付きOFDM) | CP-OFDM |
| 上り | SC-FDMA(DFT-s-OFDM) | CP-OFDM または DFT-s-OFDM |
← 表は横にスクロールできます →
「5Gの上りは必ずSC-FDMA」「5Gは上りもOFDMだけ」のように片方に言い切った記述は、どちらも正確ではありません。4択では「だけ」「必ず」の語が付いた選択肢を先に疑います。
モバイル2級ではどこで、どう問われる?
モバイル2級の出題カテゴリでは「ワイヤレス通信の原理とネットワーク技術」(15%)に当たります(MCPC 公式ページの図で確認、2026年9月時点)。100問なら約15問の枠で、多元接続方式はその中の一つのテーマです。
公式テキスト『モバイルシステム技術テキスト 第11版』の章立てでは、第3章「無線アクセスネットワーク技術」の範囲と当サイトは見ています。章とカテゴリの対応は当サイトの推定で、公式が示したものではありません。どのテーマから何問出るかも公表されていないため、以下は4択で問われうる観点を当サイトが整理したものです。
- LTE の下りと上りでそれぞれ何を使うか(組合せや空欄補充の形)
- 上りに SC-FDMA を使う理由を、PAPR・電力効率・端末の電池と結び付けられるか
- OFDM(伝送方式)と OFDMA(多元接続方式)の言葉の違い
- CP・サブキャリア間隔・リソースブロックなど、仕組みの部品の役割
- LTE と 5G NR、Wi-Fi 6 との比較で、同じ技術がどこに使われているか
- まず「LTE は下り OFDMA・上り SC-FDMA」を組で覚える
- 理由を「PAPR が小さい → 増幅器の効率がよい → 端末の電池に有利」の順につなげる
- 5G NR では上りの波形を切り替えられる点を足す
- CP・15kHz・リソースブロックなどの部品を後から肉付けする
どこで取り違えやすい?つまずき別の整理
選択肢で迷ったときに見直す点を、つまずき別にまとめました。
| よくある取り違え | 正しい整理 | 見分けるポイント |
|---|---|---|
| SC-FDMAは下りで使う | LTEでSC-FDMAを使うのは上り。下りはOFDMA | 電池で動くのは端末、送るのが端末なのは上り |
| OFDMとOFDMAは同じ意味 | OFDMは伝送方式、OFDMAはそれを複数利用者で分け合う方式 | 末尾のA(Access)は「利用者の分け方」 |
| 直交だからスペクトルは重ならない | スペクトルは重なるが、直交性で受信時に分離できる | すき間を空けて並べるのはFDMA的な発想 |
| CPは誤り訂正のための冗長ビット | CPは遅延波によるシンボル間干渉を吸収する区間 | 誤り訂正は符号化の話で、CPとは別 |
| PAPRが大きいほど電力効率がよい | PAPRが大きいと増幅器に余裕が要り、効率は下がる | ピークが高い=余裕を取る=無駄が増える |
| 5G NRの上りはSC-FDMAだけ | NRの上りはCP-OFDMとDFT-s-OFDMを使い分けられる | 「だけ」「必ず」の言い切りを疑う |
← 表は横にスクロールできます →
確認問題1:LTEの上りでSC-FDMAを使う理由は?
(当サイトの独自問題)LTEの上りリンクでSC-FDMAが採用された理由として、最も適切なものはどれか。
- 複数の端末に異なる拡散符号を割り当て、同じ周波数を同時に共有できるため
- サブキャリアの間のガードバンドを広く取り、隣の利用者との干渉をなくせるため
- 送信信号のピーク電力を抑えやすく、端末の電力増幅器を効率よく使えるため
- サイクリックプレフィックスが不要になり、マルチパスの影響を受けなくなるため
正解:3。SC-FDMA は送信前に DFT で広げることで PAPR を小さく抑えやすく、電池で動く端末の電力増幅器を効率よく動かせます。
1:拡散符号で利用者を分けるのは CDMA(第3世代の W-CDMA など)の考え方です。2:SC-FDMA も OFDMA と同じく直交するサブキャリアを詰めて並べます。ガードバンドを広げるのは採用理由ではありません。4:SC-FDMA でも CP は付けます。マルチパスの影響がなくなるのではなく、CP と等化で抑えます。
確認問題2:OFDMとOFDMAの関係を正しく説明しているのは?
(当サイトの独自問題)OFDMとOFDMAの説明として、最も適切なものはどれか。
- OFDMは直交サブキャリアで送る伝送方式で、OFDMAはそのサブキャリアを利用者ごとに割り当てる
- OFDMは複数の利用者で共有する多元接続方式で、OFDMAは1人の利用者専用の伝送方式である
- OFDMは上りだけで使う伝送方式で、OFDMAはそれを下りでも使えるように拡張した方式である
- OFDMは隣のサブキャリアと重ならない方式で、OFDMAはスペクトルを重ねて詰めた方式である
正解:1。OFDM は伝送方式、OFDMA はそのサブキャリア(と時間)を複数の利用者に割り当てる多元接続方式です。
2:説明が逆です。多元接続(Access)を表すのは OFDMA の方です。3:OFDM は上り専用の方式ではありません。LTE では下りが OFDMA、上りが SC-FDMA です。4:OFDM も OFDMA も、直交性を使ってスペクトルが重なるサブキャリアを詰めて並べる点は同じです。
確認問題3:5G NRの上りの波形として正しいのは?
(当サイトの独自問題)3GPP の 5G NR(Release 15 以降)の上りリンクの波形について、最も適切な記述はどれか。
- 上りはSC-FDMAだけに固定され、CP-OFDMは下りでしか使うことができない
- 上りは拡散符号で利用者を分けるCDMAに戻り、OFDM系の波形は使われない
- 上りも下りもCP-OFDMだけに統一され、DFTで広げる波形は廃止されている
- 上りはCP-OFDMとDFT-s-OFDMの両方が規定され、状況に応じて使い分ける
正解:4。NR の上りは CP-OFDM と DFT-s-OFDM の両方が規定され、ネットワークの設定で使い分けます(3GPP TS 38.211)。
1:CP-OFDM は NR の上りでも使えます。「だけ」が誤りです。2:NR は上下とも OFDM 系の波形で、CDMA には戻っていません。3:DFT-s-OFDM は NR の上りに残っており、廃止されていません。
読んだあと、次に何をすればいい?
用語の意味を言えるようになったら、次は「似た言葉と並んだ4択で選べるか」を確かめる段階です。モバイル2級の無料お試し20問は登録不要で、公式カテゴリの比率に合わせた問題と全問の解説を確認できます。
同じ無線の仕組みでは、アンテナの数で速度を上げるMIMOとビームフォーミング、周波数帯を束ねるキャリアアグリゲーションを続けて読むと、「何を増やして速くしているのか」という軸で整理できます。LTE と 5G の全体の違いはLTEと5G NRの違い、試験の形式と出題カテゴリはモバイル2級の試験概要にまとめています。
よくある質問
OFDMAとSC-FDMAは、どちらか一方だけ覚えればよいですか?
組で覚えるのがおすすめです。「LTE は下り OFDMA・上り SC-FDMA」と、上りに SC-FDMA を使う理由(PAPR を抑えて端末の電力効率を上げる)をセットにすると、組合せ型の選択肢でも迷いにくくなります。
SC-FDMAの「シングルキャリア」は、本当に1本の搬送波で送るのですか?
いいえ。サブキャリアには載せますが、DFT で広げてから載せるため、送信される時間波形がシングルキャリアの伝送に近い性質になる、という意味です。DFT-s-OFDM という別名のほうが仕組みをよく表しています。
サブキャリア間隔などの数値まで覚える必要はありますか?
どこまで細かく出るかは公表されていません。LTE の 15kHz は基本の値なので押さえておくと、5G NR がサブキャリア間隔を選べるようになった点との対比で整理しやすくなります。
出典・参考
- [1]MCPC モバイルシステム技術検定 2級(出題カテゴリの図、確認 2026-09-27)
- [2]3GPP TS 36.211 E-UTRA Physical channels and modulation(Release 8〜、確認 2026-09-27)
- [3]3GPP TS 38.211 NR Physical channels and modulation(Release 15〜、確認 2026-09-27)
- [4]3GPP TS 36.300 E-UTRA and E-UTRAN Overall description(確認 2026-09-27)
- [5]Wi-Fi Alliance: Wi-Fi CERTIFIED 6(OFDMA・MU-MIMO、確認 2026-09-27)
本番と同じペースで腕試し
記事の次は、本番形式の問題で。
公式の出題カテゴリの比率どおりに組んだ無料お試しを、登録不要・カード不要で解けます。続きの模試と章別ドリルは買い切りで、月額はかかりません。
あわせて読みたい
当サイトは、モバイルコンピューティング推進コンソーシアム(MCPC)とは関係のない個人が運営する非公式の学習教材です。掲載している問題はすべて当サイトのオリジナルで、実際の試験問題・過去問題・再現問題ではありません。試験の日程・受検料・出題範囲は公式サイト(https://www.mcpc-jp.org/license/ )で必ず確認してください。合格を保証するものではありません。合格の目安は当サイトの推定です。技術・制度の記述は「最終確認日」時点のものです。