この記事の要点
- ネットワークスライシングは、1つの物理的なネットワークの上に、用途ごとに性質の違う論理的なネットワーク(スライス)を同時に作る技術です。
- 3GPP は「特定のサービスや加入者向けに特化した複数のコアネットワークを同時に展開して使える能力」と説明しています(3GPP、確認 2026-09-27)。
- 用途の例は、大容量(eMBB)・低遅延と高信頼(URLLC)・多数接続(mMTC)の3つ。スライスは S-NSSAI という識別子で指定し、選択には NSSF が関わります。
- モバイル2級では出題カテゴリ「ワイヤレス通信の原理とネットワーク技術」(15%)に当たります。記事の最後に独自の確認問題3問を置きました。
ネットワークスライシングとは?一言でいうと何を分ける?
ネットワークスライシングは「1つの物理的なネットワーク設備を、用途ごとに性質の違う複数の論理的なネットワーク(スライス)に切り分けて、同時に提供する技術」です。パンを薄く切り分ける(スライスする)ように、同じ設備から目的別の網を取り出すイメージです。
3GPP の 5G System Overview は、ネットワークスライシングを「特定のサービスの提供や特定の加入者に特化した、異なるコアネットワークを同時に展開して使える能力」と説明し、事業者自身・仮想の事業者・M2M のような特定サービスなど、スライスごとの使い方の例を挙げています(確認 2026-09-27)。
ポイントは、スライスはコアネットワークだけの話ではないことです。無線区間、基地局とコアネットワークをつなぐ伝送路、コアネットワークまで、端から端(エンドツーエンド)で性質をそろえて初めて、利用者から見た「専用の網」になります。
1つの物理網を用途別に分けるとは、どういう考え方?
従来の網は、スマートフォンの通信もセンサの通信も、基本的に同じ性質の1つの網を共有していました。しかし、映像配信は大きな帯域を、機械の遠隔操作は短い遅延と高い信頼性を、多数のセンサは大量の端末の収容を求めます。1つの網をすべての要求に同時に最適化するのは難しいため、要求の違う通信ごとに、網の設定や機能の配置を変えたスライスを用意するという発想が生まれました。
5G コアネットワーク(5GC)は、機能をソフトウェアとして柔軟に配置できるサービスベースアーキテクチャと、制御と利用者データの分離を前提に設計されています。たとえば低遅延のスライスでは、利用者データを運ぶ UPF を利用者の近くに置く、といった構成が取れます。5GC の機能は5GCとはで解説しています。
スライスの指定には S-NSSAI という識別子を使います。S-NSSAI は、スライスの種類を表す SST(Slice/Service Type) と、同じ種類のスライスをさらに区別する任意の SD(Slice Differentiator) で構成されます(3GPP TS 23.501、確認 2026-09-27)。どのスライスを使わせるかの選択には、NSSF(Network Slice Selection Function)が関わります。
| 用語 | 意味 | 覚え方 |
|---|---|---|
| スライス | 用途ごとに切り出した論理的なネットワーク | 同じ設備から取り出した「専用の網」 |
| S-NSSAI | スライスを指定する識別子 | スライスの「名札」 |
| SST | スライスの種類(大容量向け・低遅延向けなど) | 名札の「種類」の欄 |
| SD | 同じ種類のスライスを区別する任意の値 | 名札の「枝番」 |
| NSSF | 端末が使うスライスの選択を支援するネットワーク機能 | S=Selection(選ぶ係) |
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用途別にどう分ける?大容量・低遅延・多数接続の例
5G の用途は、大容量(eMBB)・超高信頼低遅延(URLLC)・多数同時接続(mMTC)の3つで説明されることが多く、3GPP の Release 16 の紹介でも eMBB・mMTC・URLLC の要求条件に照らした評価が挙げられています(確認 2026-09-27)。スライスは、この3つの性質を網の設定として実現する手段と考えると整理しやすくなります。
| 用途 | 重視すること | スライスで工夫すること | 利用の例 |
|---|---|---|---|
| 大容量(eMBB) | 高い通信速度と容量 | 広い帯域を割り当て、大量のデータを流せるようにする | 高精細な映像の配信・中継 |
| 低遅延・高信頼(URLLC) | 短い遅延と途切れにくさ | 利用者データを運ぶ機能を近くに置き、優先して処理する | 機械の遠隔操作・自動運転の支援 |
| 多数接続(mMTC) | 大量の端末の収容と省電力 | 小さなデータを多数の端末から効率よく受ける | スマートメーター・環境センサ |
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3GPP TS 23.501 では、SST の標準の値として、大容量向け・低遅延高信頼向け・多数の IoT 端末向けなどが定義されており、リリースを追うごとに種類が追加されています(確認 2026-09-27)。値の番号を覚えるよりも、「種類を表す欄と、区別する枝番がある」という構造を押さえておくと、選択肢の言い換えに対応できます。
モバイル2級ではどこで、どう問われる?
モバイル2級の出題カテゴリでは「ワイヤレス通信の原理とネットワーク技術」(15%)に当たります(MCPC 公式ページの図で確認、2026年9月時点)。100問なら約15問の枠です。
公式テキスト『モバイルシステム技術テキスト 第11版』の章立てでは、第4章「コアネットワーク技術」の範囲と当サイトは見ています。章とカテゴリの対応は当サイトの推定です。出題の頻度や配点は公表されていないため、以下は4択で問われうる観点を当サイトが整理したものです。
- 定義(1つの物理網を用途ごとの論理網に分ける)を、別の技術の説明と見分けられるか
- 3つの用途(eMBB・URLLC・mMTC)と、それぞれが重視する性質の組合せ
- スライスがエンドツーエンドの考え方であること(コアネットワークだけではない)
- S-NSSAI・NSSF など、スライスの指定と選択に関わる用語
- QoS 制御、ローカル5G、VPN など、似た目的の仕組みとの区別
どこで取り違えやすい?つまずき別の整理
選択肢で迷ったときに見直す点を、つまずき別にまとめました。特に、似た目的を持つ別の仕組みとの区別が4択の分かれ目になります。
| よくある取り違え | 正しい整理 | 見分けるポイント |
|---|---|---|
| スライスごとに別の物理設備を建てる | 同じ物理設備の上に論理的な網を作る | 物理は共有、論理で分ける |
| スライスはコアネットワークだけの設定 | 無線・伝送路・コアのエンドツーエンドで考える | 利用者から見た専用の網 |
| スライシングは通信の優先度(QoS)の別名 | QoSは1つの網の中で流れを扱い分ける。スライスは網そのものを分ける | 分けているのが流れか網か |
| ローカル5Gはスライシングの一種 | ローカル5Gは企業などが免許を受けて自ら構築する5G網 | 誰が網を持つか |
| スライスの選択はNRFが行う | スライスの選択に関わるのはNSSF。NRFは機能の登録と発見 | S=Selection |
| スライシングは4GのEPCでも同じように使える | 5GCがスライスを前提に設計されている | 5GのSA構成で本領を発揮 |
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ローカル5G は、通信事業者の網を分けるスライシングとは別に、企業や自治体などが自らの建物や敷地で 5G の網を持つ仕組みです。違いはローカル5Gとはで詳しく解説しています。
確認問題1:ネットワークスライシングの説明として正しいのは?
(当サイトの独自問題)ネットワークスライシングの説明として、最も適切なものはどれか。
- 用途ごとに別の物理的な設備を建て、それぞれを独立した網として運用する技術
- 1つの周波数帯を細かいサブキャリアに分け、複数の利用者に割り当てる技術
- 企業が免許を受けて自らの敷地に基地局を置き、独自の5G網を構築する技術
- 1つの物理的な網の上に、用途ごとに性質の違う論理的な網を同時に作る技術
正解:4。スライシングは、同じ物理設備の上に用途ごとの論理的な網(スライス)を同時に作る技術です。
1:物理設備を用途ごとに分けて建てるのではなく、共有した設備の上で論理的に分けます。2:サブキャリアで利用者を分けるのは OFDMA の説明です。3:企業などが自ら 5G 網を持つのはローカル5G の説明です。
確認問題2:用途と重視する性質の組合せは?
(当サイトの独自問題)5G の用途と、そのスライスで特に重視する性質の組合せとして、最も適切なものはどれか。
- 工場の機械の遠隔操作 ― 大量の端末を効率よく収容できること
- 多数の環境センサからの収集 ― 大量の端末を効率よく収容できること
- 高精細な映像の中継 ― 小さなデータを少ない電力で送れること
- スマートメーターの検針 ― 高い通信速度と大きな容量を出せること
正解:2。多数の環境センサからのデータ収集は mMTC にあたり、大量の端末を効率よく収容できることが重視されます。
1:機械の遠隔操作は URLLC にあたり、重視するのは短い遅延と高い信頼性です。3:映像の中継は eMBB にあたり、重視するのは高い通信速度と容量です。小さなデータを省電力で送るのは多数接続の用途の特徴です。4:スマートメーターは多数接続の例で、高い通信速度や大きな容量が主な要求ではありません。
確認問題3:スライスの選択に関わる機能は?
(当サイトの独自問題)5G コアネットワークにおいて、端末が使うネットワークスライスの選択に関わる機能として、最も適切なものはどれか。
- NSSF(Network Slice Selection Function)
- NRF(Network Repository Function)
- UPF(User Plane Function)
- NEF(Network Exposure Function)
正解:1。NSSF はネットワークスライスの選択を支援する機能です(3GPP「5G System Overview」)。
2:NRF はネットワーク機能の登録と発見を担う「名簿」の役割です。3:UPF は利用者データを転送する機能です。スライスによって置き場所は変わりますが、選択そのものは担いません。4:NEF は網の機能を外部のアプリケーションへ公開する機能です。
読んだあと、次に何をすればいい?
「物理は共有、論理で分ける」「QoS は流れ、スライスは網」と言えるようになったら、似た技術が並ぶ4択で確かめます。モバイル2級の無料お試し20問は登録不要で、公式カテゴリの比率に合わせた問題と全問の解説を確認できます。
スライスを支える土台は5GCとは、低遅延のスライスと関係の深いエッジでの処理はMECとはで解説しています。企業が自ら網を持つ仕組みとの違いはローカル5Gとは、試験全体はモバイル2級の試験概要へ。
よくある質問
ネットワークスライシングは、今のスマートフォンでも使われていますか?
どの事業者がどのスライスをどの料金プランで提供しているかは、時期と事業者によって変わるため、この記事では断定しません。仕組みとしては 5G のコアネットワーク(5GC)を使う SA 構成で本来の力を発揮する技術、と押さえておくのが試験対策として確実です。
SSTの値(番号)まで覚える必要がありますか?
どこまで細かく出るかは公表されていません。番号よりも、S-NSSAI が「種類(SST)」と「区別のための枝番(SD)」で構成される、という構造を説明できることを優先しましょう。
スライシングとVPNは何が違いますか?
VPN は、共有の網の上に特定の利用者どうしの閉じた通信路を作る仕組みです。スライシングは、無線からコアまでの網の性質(容量・遅延・収容数など)そのものを用途ごとに変える点が違います。「閉じた通り道」か「性質の違う網」かで区別すると整理しやすくなります。
出典・参考
本番と同じペースで腕試し
記事の次は、本番形式の問題で。
公式の出題カテゴリの比率どおりに組んだ無料お試しを、登録不要・カード不要で解けます。続きの模試と章別ドリルは買い切りで、月額はかかりません。
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