この記事の要点
- NTN(Non-Terrestrial Network、非地上系ネットワーク)は、衛星や高高度の飛行体に中継器や基地局の機能を載せ、空から通信エリアを作るネットワークです。
- 3GPP では Release 17 が NTN の要件を初めて仕様に盛り込んだリリースで、NR の NTN は静止軌道(GEO)と低軌道(LEO)の衛星を中心に、手のひらサイズの端末(スマホ)も対象にしています(3GPP、2026年9月27日確認)。
- 高度は LEO がおおむね500〜2,000km、GEO が赤道上35,786km、HAPS が8〜50kmです。高いほど1機で広く覆えるが、電波の往復に時間がかかると覚えます。
- モバイル2級の公式テキスト第11版の改版の要点に NTN が含まれています。出題カテゴリ「ワイヤレス通信の原理とネットワーク技術」(公式の比率は15%)に当たる範囲です。
NTN(非地上系ネットワーク)とは、何を指すのか?
一言でいうと、NTN は「基地局や中継器を地上ではなく、空や宇宙に置く」移動通信ネットワークです。地上の基地局網(Terrestrial Network)に対して、地上以外という意味で Non-Terrestrial と呼びます。
3GPP の NTN の解説は、NTN を、おおむね高度8〜50kmを飛ぶ無人航空機システム(HAPS を含む)や、さまざまな軌道の衛星に、中継ノードや基地局を載せて使うネットワークと説明しています(2026年9月27日確認)。
MCPC は、モバイルシステム技術テキスト第11版の改版の要点として、山間部・離島・海上などの圏外の解消や災害時の通信での活用が期待される NTN の記述を追加したと案内しています(2026年9月27日確認)。つまり NTN は、地上の基地局ではカバーしにくい場所を補う技術として位置づけられています。
衛星(GEO・MEO・LEO)と HAPS は、どう違うのか?
NTN で使う「空の足場」は、高度と動き方で性格が大きく変わります。高度は3GPP の解説に示された代表的な値です。
| 種類 | 高度(代表値) | 地上から見た動き | 1機で覆える範囲 | 電波の往復の時間 |
|---|---|---|---|---|
| GEO(静止軌道衛星) | 赤道上35,786km | 空の一点に止まって見える | 非常に広い | 長い(数百ミリ秒に達する) |
| MEO(中軌道衛星) | おおむね8,000〜20,000km | ゆっくり動く | 広い | GEO より短い |
| LEO(低軌道衛星) | おおむね500〜2,000km | 速く動き、短い時間で見えなくなる | 狭い(多数の衛星で覆う) | 短い |
| HAPS(高高度プラットフォーム) | 8〜50km | ある地域の上空にとどまるよう運用する | 衛星より狭い | 地上に近い |
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3GPP の解説によると、地上の網の伝搬遅延が通常1ms未満なのに対し、GEO 衛星では数百ミリ秒になり得るため、送信タイミングの調整や再送の手順を拡張する必要があります。
LEO は遅延が短い代わりに、衛星が高速で動くため、同じ衛星とつながっていられる時間が短く、電波の周波数がずれる(ドップラー効果)という課題があります。多数の衛星を連ねて(コンステレーション)切れ目なく覆うのはこのためです。
スマホと衛星が直接つながるのは、どんな考え方か?
従来の衛星通信は、大きなアンテナや専用の端末が必要でした。NTN の特徴は、普通の携帯電話の規格(NR や LTE 系)を空の足場に延ばし、手元の端末から直接つなげる方向を目指している点です。
3GPP の解説で押さえておきたい点を、順に並べます。
- Release 17 で初めて規定:NR の NTN は、衛星が電波をそのまま折り返す「透過型」の GEO と LEO を中心に規定され、一般的な出力(パワークラス3)の手のひらサイズの端末も対象になった。
- 衛星向けの周波数帯を追加:FR1 の中に、L 帯(n255)と S 帯(n256)が NTN 用の帯域として加わった。
- 端末は GNSS を使う:NTN 対応の端末は GNSS(衛星測位)を使えることが前提で、自分の位置と衛星の軌道情報から、送信タイミングとドップラーによる周波数のずれを事前に補正する。
- IoT も対象に:NB-IoT・eMTC(LTE-M)の NTN 対応は Release 17 で作業が始まり、性能要件は Release 18 で完成した。
- その後の拡張:Release 18 では NTN を5Gシステムにさらに統合する改良、Release 19 では衛星上で基地局の処理を行う「再生型」への対応などが進んだ。
透過型は、衛星が受けた電波の周波数を変えて増幅し、そのまま地上へ返す「空の中継器」です。再生型は、衛星の上で復調・復号などの処理を行い、基地局の機能を担います。処理が地上か宇宙かで区別してください。
GNSS の仕組みと日本の準天頂衛星(みちびき)はGNSSとみちびきで扱います。6Gで NTN との統合がどう位置づけられているかは6Gとはで整理しています。
モバイル2級では、どの範囲で、どう問われそうか?
MCPC の公式ページの図では、モバイルシステム技術検定 2級(100問・100分・4者択一)の出題カテゴリ「ワイヤレス通信の原理とネットワーク技術」の比率が15%と示されています(2026年9月27日確認)。どの用語が何問出るかは公表されていません。
当サイトでは、公式テキスト『モバイルシステム技術テキスト 第11版』の第3章「無線アクセスネットワーク技術」がこの範囲に当たると推定しています(章名から当サイトが判断したもので、公式の対応表ではありません)。第11版で何が変わったかはモバイルシステム技術テキスト第11版の変更点にまとめています。
4択での問われ方は、次のような型が考えられます。出題頻度の公式データはないため、型の整理として読んでください。
- 定義:NTN の説明として適切なものを、ローカル5Gや地上の中継局の説明と並べて選ばせる。
- 軌道の性質:GEO・LEO・HAPS の高度、遅延、動き方の組合せを問う。
- 標準化:NTN が初めて規定された3GPP のリリースを問う。
- 技術的な課題:遅延やドップラー効果への対策として適切な記述を選ばせる。
試験全体の形式はモバイルシステム技術検定2級とはにまとめています。
どこで取り違えやすいのか?
NTN は新しい用語のため、「衛星なら遅い」「高いほど良い」といった大ざっぱな印象で選ぶと外しやすくなります。
| 取り違え | 正しい考え方 | 確認する問い |
|---|---|---|
| NTN は衛星だけを指す | HAPS など高高度の飛行体も含む | 足場は宇宙か、成層圏か |
| LEO は GEO より遅延が大きい | LEO は地上に近いので往復の時間は短い | 高度はどちらが高いか |
| GEO は地上から見て速く動く | GEO は地上から見て止まって見える。速く動くのは LEO | 軌道の周期と地球の自転の関係 |
| NTN は Release 15 から規定 | NTN の要件を初めて盛り込んだのは Release 17 | どのリリースの話か |
| 透過型の衛星が基地局の処理をする | 透過型は中継するだけ。処理をするのは再生型 | 処理は地上か、衛星の上か |
| スマホは衛星の位置を知らなくてよい | NTN 対応の端末は GNSS で位置を知り、タイミングと周波数を補正する | 端末側で何を補正するか |
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確認問題1:NTN の説明を選べるか?
NTN(非地上系ネットワーク)の説明として、最も適切なものはどれか。
- 企業が自らの敷地内で免許を受けて構築し、工場の機器をつなぐ5Gのネットワーク
- 衛星や高高度の飛行体に中継器や基地局の機能を載せ、空から通信エリアを作るネットワーク
- 地下街やトンネルなど、電波が届きにくい場所に地上の中継装置を置いて作るネットワーク
- 光ファイバーで基地局とコアを結び、地上の有線区間だけで構成する基幹のネットワーク
正解:2。NTN は、衛星や HAPS などの空の足場に中継や基地局の機能を載せるネットワークです。
1はローカル5Gの説明です。3は地上の中継局による不感対策で、足場が地上にある点で NTN とは違います。4はバックホールなど有線区間の説明で、非地上系ではありません。
確認問題2:軌道の性質を比べられるか?
NTN で使われる衛星や飛行体に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- GEO の衛星は地上から見て速く動くため、多数の衛星を連ねて覆う必要がある
- HAPS は静止軌道よりも高い高度を飛び、1機で地球の3分の1ほどを覆える
- LEO の衛星は GEO より地上に近く、電波の往復にかかる時間が短くなる
- MEO の衛星は LEO より地上に近く、ドップラー効果の影響が最も大きくなる
正解:3。LEO はおおむね高度500〜2,000km で、赤道上35,786km の GEO より地上に近いため、電波の往復の時間は短くなります。
1は逆で、地上から見て止まって見えるのが GEO、速く動くため多数の衛星で覆うのが LEO です。2の HAPS は高度8〜50km で、静止軌道よりはるかに低い位置を飛びます。4の MEO は LEO より高い軌道です。
確認問題3:NTN の端末の工夫を説明できるか?
次の文の空欄に入る語句として、最も適切なものはどれか。
「3GPP の NTN では、端末が( )を使って自分の位置を求め、衛星の軌道情報と組み合わせて、送信のタイミングとドップラー効果による周波数のずれをあらかじめ補正することが想定されている。」
- NFC
- Wi-Fi
- Bluetooth
- GNSS
正解:4。3GPP の解説は、NTN に対応する端末はすべて GNSS を使えることを前提に、タイミングとドップラーのずれを自律的に補正するとしています。
1の NFC は数cm程度の近距離でデータをやり取りする技術で、測位には使いません。2の Wi-Fi は無線LAN で、衛星の位置と自分の位置から補正量を求める仕組みではありません。3の Bluetooth は近距離の無線通信です。
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よくある質問
NTN があれば、地上の基地局はいらなくなりますか?
そうは言えません。NTN は、地上の網ではカバーしにくい山間部・海上・災害時などを補う位置づけで説明されています。衛星の電波は建物の中に届きにくいことや、遅延・通信容量の制約もあるため、地上の網と組み合わせて使う前提で考えてください。
HAPS は衛星の一種ですか?
衛星ではありません。HAPS は成層圏付近(3GPP の解説では高度8〜50km)を飛ぶ無人の飛行体などで、宇宙の軌道を回る衛星とは別の足場です。どちらも NTN に含まれる、という関係です。
国内の衛星とスマホの直接通信サービスも覚える必要がありますか?
サービス名や開始日は事業者ごとに変わるため、当サイトでは扱っていません。試験対策では、NTN の定義、軌道ごとの性質、3GPP での位置づけを優先し、サービスについて覚える場合は各社の公式発表で確認してください。
出典・参考
本番と同じペースで腕試し
記事の次は、本番形式の問題で。
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