この記事の要点
- 端末値引き規制とは、携帯電話会社などが、通信契約と結び付けて端末を大きく値引きすることを制限するルールです。根拠は電気通信事業法第27条の3(2019年10月1日施行)と、施行規則第22条の2の16です。
- 上限は、端末の対照価格が8万円を超えるとき原則4万円、2万円を超え8万円以下は価格の5割か2万円の高いほう、2万円以下は対照価格未満の額までです(2026年9月27日にe-Govの条文と総務省の窓口ページで確認)。総務省のガイドラインは、金額を税抜で計算するとしています。
- 上限を2万円から4万円に見直し、それまで規制の外だった「白ロム割」も上限に含めた改正は、2023年12月27日から適用されました。目的は、再び広がった「1円販売」などの大幅な値引きの是正です。
- 2024年12月26日から適用された見直しでは、売れ残った在庫端末の特例(最終調達日から12か月で半額、24か月で8割、36か月で定価まで)や、ミリ波対応端末の上限の特例(原則5.5万円)が整理されました。
端末値引き規制とは?
端末値引き規制とは、通信サービスの契約を条件にした端末の値引きやキャッシュバックなどに上限を設け、通信料金と端末代金を分けて考えられるようにするためのルールです。
かつては、端末を大幅に値引きする代わりに、長期の契約や高めの通信料金で回収する売り方が広く行われていました。これでは、端末を買わずに同じ会社を使い続ける人が、ほかの人の端末値引きの費用を負担しているような形になり、料金やサービスでの競争が進みにくくなります。そこで、2019年の電気通信事業法の改正(令和元年法律第5号、2019年10月1日施行)で第27条の3が設けられました。
第27条の3は、総務大臣が指定した携帯電話事業者などに対し、次の2つを禁止しています(2026年9月27日にe-Govで確認)。
- 端末の販売などの契約をすることを条件に、通信料金を有利にするなど、事業者間の適正な競争を妨げるおそれのある利益を提供すること(通信料金と端末代金の分離)
- 契約の解除を不当に妨げるような料金その他の提供条件を約束させること(行き過ぎた囲い込みの禁止)
対象は、大手携帯電話会社(MNO)とその子会社などです。独立系のMVNOは、利用者数の割合が施行規則で定める割合(4%)を超える場合に対象になります(施行規則第22条の2の15)。総務省の情報提供窓口のページには、対象となる電気通信事業者として計20社と、その販売代理店(携帯電話ショップ、家電量販店など)が挙がっています(2026年9月27日確認)。
上限額のルールは?(端末価格別)
上限の金額は、施行規則第22条の2の16第1項第2号にあります。通信契約(新規契約や機種変更)と結び付けて提供する値引き・キャッシュバック・ポイントなどの合計額に、端末の「対照価格」(事業者が定めた販売価格などをもとにした基準の価格)に応じた上限がかかります。
| 端末の対照価格 | 上限 | 例 |
|---|---|---|
| 8万円を超える | 4万円 | 対照価格12万円 → 上限4万円 |
| 4万円を超え8万円以下 | 対照価格の5割 | 対照価格6万円 → 上限3万円 |
| 2万円を超え4万円以下 | 2万円(5割より2万円のほうが高いため) | 対照価格3万円 → 上限2万円 |
| 2万円以下 | 対照価格未満の額(総務省の窓口ページの説明) | 対照価格1.5万円 → 1.5万円未満(実質0円にはできない) |
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条文の書き方は「4万円(対照価格が2万円を超え8万円以下のときは、その5割か2万円のいずれか高い額、2万円以下のときは対照価格)」です。総務省の情報提供窓口のページは、これを「定価が4万〜8万円は50%、2万〜4万円は2万円、2万円以下は定価未満の額が上限」と説明しています。つまり、4万円以下の端末がすべて2万円ではなく、2万円以下の端末は価格未満が上限です(条文の例外規定ロも、2万円以下の端末で合計額が対照価格未満のものを認める形です)。
さらに条文は、この額と「対照価格から、先行同型機種(同じメーカーの前の型)の買取価格を引いた額」のいずれか低いほうを上限にしています。古い機種の高すぎる下取りで上限を超えないようにする仕組みです。総務省のガイドラインは、利益の提供額は税抜の額で計算するとしています。
規制の目的は?(1円スマホの是正)
2019年の制度開始時の上限は一律2万円(税抜)でした。ところが、端末を買うことだけを条件にした値引き(いわゆる白ロム割)は、通信契約と結び付いていないとして上限の対象外だったため、これを使って再び「1円販売」などの大幅な値引きが行われるようになりました(総務省の2023年11月の改正概要)。
総務省の「競争ルールの検証に関するWG」の報告書2023(2023年9月11日公表)を踏まえた改正のポイントは、次のとおりです。
- 通信サービスと端末のセット販売(機種変更を含む)のときの白ロム割も上限に含める
- 上限を原則4万円にする。平均的な利用者1人の通信料収入から期待される利益を、ARPUの3年平均(4,137円)×営業利益率の3年平均(18.9%)×端末の平均使用年数(53.2か月)=約4.1万円と計算した結果
- 安い端末で「転売ヤー」や「1円端末」の問題が起きないよう、4万〜8万円の端末は価格の50%、4万円以下は2万円とする(報告書の表現。条文では、2万円以下の端末は対照価格が基準になる)
- 複数の販売価格を設定する場合も、対照価格が調達価格を下回らないようにする
総務省のガイドラインの改正履歴によると、この見直しの考え方は2023年12月27日から適用されました。あわせて、規制の対象となる独立系MVNOの基準が、契約数の割合0.7%超から4%超に見直されています(概要資料)。
その後の見直しは?
総務省は、報告書2024(2024年9月12日公表)を踏まえて施行規則を改正しました(2024年11月20日の概要資料)。ガイドラインの改正履歴には「2024年12月5日改正、同年12月26日から適用」とあります。主な内容は2つです。
| 項目 | 見直し前 | 見直し後 |
|---|---|---|
| 売れ残った在庫端末の特例 | 製造中止の有無で区分(製造中止でない端末は最終調達日から24か月で半額まで、など) | 製造中止の有無に関係なく、最終調達日から12か月で半額、24か月で8割、36か月で定価まで値引き可。発売から12か月以内に最終調達したときは、発売から12か月後を最終調達日とみなす。端末購入プログラムとの併用は不可 |
| ミリ波対応端末 | 上限は原則4万円 | 当分の間、条文の「4万円」を「5万5千円」、「8万円」を「11万円」と読み替える(施行規則附則第4項)。対照価格11万円超は上限5.5万円、2万円超11万円以下は5割か2万円の高いほう |
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このほか条文には、3Gの終了に伴って、3Gしか使えない端末の利用者が新しい方式の端末を買う場合に、対照価格まで利益を提供できる特例も残っています(施行規則第22条の2の16第1項第2号ハ)。3Gの終了は3G停波とはで扱っています。
金額や特例は今後も見直される可能性があります。総務省は2025年9月5日、端末の販売価格は店舗ごとに異なるので支払総額をよく確認するよう注意喚起しており、2025年10月からは情報通信審議会の消費者保護政策委員会で検討も進んでいます。2026年9月27日にe-Govで確認した現行の施行規則(2026年8月10日施行の改正を反映した版)でも、この記事の上限額と特例は上のとおりです。今後の扱いは、e-Govの条文と総務省の資料で確認してください。
店頭で説明することは?
当サイトの整理では、店頭で値引きを案内するときは次の点を押さえます(実際の運用は各社のマニュアルに従ってください)。
- 値引きの条件をはっきり示す:新規契約・MNP・機種変更など、何を条件にした値引きかを説明する。総務省の情報提供窓口は、条件が書かれていない、文字が小さく分かりにくいといった不適切な広告表示も通報の対象にしている。
- 支払総額を示す:値引きの額だけでなく、端末代金・通信料金・オプションを含めた支払総額を比べられるようにする。
- 上限を超える提案をしない:通信契約と結び付けた値引き・キャッシュバック・ポイントの合計が、端末の対照価格に応じた上限を超えないか確認する。
- 端末購入プログラムの条件を説明する:将来端末を返す条件で残りの支払いを免除する仕組みなどは、返却の条件や時期を説明する。
- 囲い込みにならないか確認する:解約を不当に妨げる条件を約束させない。
消費者保護のほかのルール(説明義務・書面交付・初期契約解除)と合わせた整理はスマホ実務検定の消費者保護まとめ、条文ごとの解説は電気通信事業法の消費者保護ルールにあります。
検定で問われやすい点は?
公式テキスト『モバイル基礎テキスト 第9版』は2024年6月末時点の情報です。2023年12月の上限見直しや2024年12月の特例の見直しがどこまで反映されているかは、当サイトでは確認していません。スマートフォン・モバイル実務検定の出題カテゴリには「時事問題(公式テキスト非掲載)」があり、こうした制度の変更は時事問題として出る可能性があると当サイトは考えています(公式の出題比率は公表されていません)。
当サイトの作問の観点では、次の点が選択肢になりやすいと考えています(出題の傾向や頻度を示すものではありません)。
- 原則の上限(4万円)と、区分の境目(8万円・2万円)を取り違えない
- 4万〜8万円の端末は価格の5割、4万円以下は2万円
- 2019年の上限(2万円)と2023年の見直し後(原則4万円)の違い
- 白ロム割もセット販売なら上限に含まれる
- 金額は税抜で計算する
制度の時事は時事問題対策、第9章全体はモバイル技術基礎 第9章の要点へ。
当サイト(ICT模試)は MCPC とは関係のない非公式の個人運営教材で、合格を保証するものではありません。公式テキストの本文・図表・巻末のサンプル問題は使わず、確認問題はすべて独自に作っています。
確認問題1:高価格の端末の値引き上限は?
対照価格が12万円(税抜)の端末(ミリ波非対応)を、通信契約とセットで販売する。先行同型機種の買取りはないものとして、通信契約と結び付けた値引きなどの合計額の上限として最も適切なものはどれか(2026年9月時点)。
- 2万円
- 4万円
- 6万円
- 12万円
正解:2。対照価格が8万円を超える端末の上限は、原則4万円です(施行規則第22条の2の16第1項第2号)。
1 の2万円は2019年の制度開始時の上限、または対照価格が2万円超4万円以下の端末の上限です。3 の6万円は対照価格の5割ですが、5割が上限になるのは対照価格が8万円以下の端末だけです。4 の12万円(全額)の値引きは認められていません。
確認問題2:中価格帯の端末の値引き上限は?
対照価格が6万円(税抜)の端末を、通信契約とセットで販売する。先行同型機種の買取りはないものとして、値引きなどの合計額の上限として最も適切なものはどれか(2026年9月時点)。
- 3万円
- 2万円
- 4万円
- 6万円
正解:1。対照価格が2万円を超え8万円以下の端末は、対照価格の5割か2万円のいずれか高い額が上限です。6万円の5割は3万円で、2万円より高いので3万円になります。
2 の2万円は、5割が2万円を下回る場合(対照価格が2万円を超え4万円以下)の上限です。3 の4万円は、対照価格が8万円を超える端末の上限です。4 の6万円(全額)の値引きは認められていません。
確認問題3:値引き規制の説明で誤りはどれ?
端末値引き規制の説明として、適切でないものはどれか(2026年9月時点)。
- 利益の提供額は、税抜の額で計算する
- 最終調達日から36か月が経過した在庫端末は、条件を満たせば対照価格まで値引きできる
- 上限を原則4万円とする見直しは、2023年12月27日から適用された
- 端末の購入だけを条件とする値引き(白ロム割)は、通信契約とセットで購入する場合でも上限の対象外である
正解:4。2023年の見直しで、通信サービスと端末のセット販売(機種変更を含む)のときに行う白ロム割も、上限の範囲に含めることになりました。
1 は総務省のガイドラインの考え方、2 は2024年の見直し後の在庫端末の特例(施行規則第22条の2の16第1項第2号イ)、3 はガイドラインの改正履歴のとおりで、いずれも適切です。
よくある質問
端末だけを買う場合も値引きの上限はありますか?
条文の上限は、通信契約(新規契約や継続利用)と結び付けた利益の提供を対象にしています。2023年の見直しで、セット販売のときの白ロム割は上限に含まれるようになりました。端末だけの購入の扱いや、転売を防ぐための各社の条件は、総務省のガイドラインと各社の案内で確認してください。
MVNO(格安SIM)の会社も規制の対象ですか?
MNOの子会社などは対象です。独立系のMVNOは、利用者数の割合が4%を超える場合に対象になります(施行規則第22条の2の15。2023年の見直しで0.7%から変更)。総務省の情報提供窓口のページで、対象の事業者が公表されています。
上限を超える値引きを見かけたらどうすればいいですか?
総務省は、行き過ぎた端末の値引きやキャッシュバック、不当な拘束条件、不適切な広告などについて、匿名で情報を受け付ける窓口を設けています(テレコム競争政策ポータルサイト「端末販売の適正化等の取組に係る情報提供窓口」)。
ポイント還元も値引きに含まれますか?
施行規則第22条の2の16は、代金の値引きのほか、ほかの役務や財の値引き・無償提供、金銭その他の経済的な利益の提供も対象にしています。ポイントの扱いの細部は、総務省の「電気通信事業法第27条の3等の運用に関するガイドライン」で確認してください。
出典・参考
- [1]e-Gov 法令検索:電気通信事業法(第27条の3、2026年9月27日確認)
- [2]e-Gov 法令検索:電気通信事業法施行規則(第22条の2の15・第22条の2の16、2026年9月27日確認)
- [3]総務省 テレコム競争政策ポータルサイト 端末販売の適正化等の取組に係る情報提供窓口(2026年9月27日確認)
- [4]総務省 電気通信事業法施行規則等の一部改正 概要(2023年11月、2026年9月27日確認)
- [5]総務省 電気通信事業法施行規則の一部改正 概要(2024年11月20日、2026年9月27日確認)
- [6]総務省 電気通信事業法第27条の3等の運用に関するガイドライン(2024年12月改正版、2026年9月27日確認)
- [7]総務省 報道資料 ガイドライン改正案に対する意見募集の結果及び改正したガイドラインの公表(2024年12月5日)
- [8]総務省 報道資料 携帯電話端末の販売価格に関する注意喚起(2025年9月5日、2026年9月27日確認)
- [9]総務省 電気通信消費者情報コーナー:消費者保護ルール(2026年9月27日確認)
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