この記事の要点
- LPWAは「少ない電力で、広い範囲に、少量のデータを送る」無線通信の総称。日本では免許不要の920MHz帯を使う方式(Sigfox・LoRaWANなど)と、携帯電話の周波数を使う方式(LTE-M・NB-IoT)に分かれる。
- 4方式は「免許」「速度」「距離」「移動」の4軸で表にすると混同しにくい。移動しながら使うなら、ハンドオーバーに対応するLTE-Mが第一候補。
- IoT中級では出題カテゴリ「センサ/アクチュエータ技術と通信方式」(公式の図で25〜30%)の範囲。方式と団体の組合せ、免許の有無、LoRaとLoRaWANの層の違いが取り違えやすい。
- 最後に独自の確認問題3問(全選択肢の解説つき)で、比較表を使えるかを確かめる。
LPWAとは?一言でいうと何が特徴?
LPWA(Low Power Wide Area)は、電池で長く動き、数km〜数十kmの距離を、少ないデータ量でつなぐ無線通信の総称です。1つの規格名ではなく、複数の方式をまとめた呼び方です。京セラコミュニケーションシステム(KCCS)の解説では、通信環境によって数km〜数十kmの長距離伝送ができ、電池1つで数年単位の稼働も可能な一方、通信速度は携帯電話網やWi-Fiより低速で、送信容量に制限がある方式もある、と整理されています(2026年9月27日確認)。
Wi-FiやBluetoothと比べると、速度をあきらめる代わりに距離と電池寿命を取った方式群と考えると、位置づけがぶれません。水道やガスのメーター、河川の水位、駐車場の空き、物流パレットの所在など、「1日に数回、数十バイトを送れば足りる」用途が典型です。
日本のLPWAは、使う周波数の免許で大きく2つに分かれます。
- 免許不要の周波数帯(アンライセンスバンド)を使う方式:Sigfox、LoRaWAN、ELTRES、ZETAなど。日本では920MHz帯を使う
- 免許が必要な周波数帯(ライセンスバンド)を使う方式:LTE-M(LTE Cat.M1)、NB-IoT(LTE Cat.NB1)。携帯電話事業者の周波数を使い、3GPPで標準化されている
この2分類はKCCSのLPWA解説(同社調べ、2020年5月時点の表)によります。920MHz帯の無線設備にはARIBの標準規格 STD-T108「920MHz帯テレメータ用、テレコントロール用及びデータ伝送用無線設備」があり、2026年9月時点の最新は第1.5版(2023年3月)です。
4方式は何が違う?免許・速度・距離・移動の比較表
IoT中級の学習で押さえたい4方式を、同じ軸で並べます。数値は各団体・事業者の公表値で、電波環境・設定・規格のバージョンによって変わります。
| 比較軸 | Sigfox | LoRaWAN | NB-IoT | LTE-M |
|---|---|---|---|---|
| 免許 | 不要(日本は920MHz帯) | 不要(日本は920MHz帯) | 必要(携帯電話の周波数) | 必要(携帯電話の周波数) |
| 仕様・技術の主体 | UnaBiz(Sigfoxの技術を保有) | LoRa Alliance | 3GPP(Release 13で規定) | 3GPP(Release 13で規定) |
| 速度の目安 | 〜100bps程度。1メッセージ最大12バイト | 低速(設定で変わる) | 下り最大26kbps(Release 13) | 最大1Mbps(Release 13) |
| 距離の目安 | 数km〜数十km(環境による) | 郊外で最大15km程度(LoRa Alliance の説明) | 携帯の基地局エリア | 携帯の基地局エリア |
| 網の作り方 | 事業者の公衆網(日本はKCCS) | 自営網・公衆網のどちらも可 | 携帯事業者の公衆網 | 携帯事業者の公衆網 |
| ハンドオーバー | —(KCCSの表に記載なし) | 端末は特定のゲートウェイに属さない設計 | なし | あり(移動しながら通信できる) |
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表を読むコツは、上の2行(免許と主体)で2グループに分け、下の行で同じグループ内の差を見ることです。免許不要の2方式は「自分でゲートウェイを置いて網を作れるか(LoRaWANは可)」、免許ありの2方式は「移動と速度を取るか(LTE-M)、さらに狭い帯域で低速に徹するか(NB-IoT)」が分かれ目です。
LTE-MはVoLTE(LTEの音声通話)にも対応できる、と試験機器メーカーのローデ・シュワルツが説明しています。音声を扱えるのは4方式のうちLTE-Mだけ、と覚えておくと、用途を問う問題で選択肢を1つ絞れます。
速度・距離は規格上の上限や事業者の説明値です。実際の通信は電波環境、設置場所、設定で大きく変わるため、数値そのものより大小関係と桁(bps・kbps・Mbps)を押さえてください。
どの方式を選べばいい?用途から絞る判断手順
用途の条件から方式を絞る手順を、確認する順に並べます。事例型の4択でも、問題文からこの順で条件を拾うと選択肢を切りやすくなります。
- 機器は移動するか:車両・人・荷物など、通信中に基地局をまたぐなら、ハンドオーバーのあるLTE-Mが第一候補。
- 音声や比較的大きなデータを送るか:音声通話や、ファームウェア更新のようにまとまったデータを送るなら、速度に余裕のあるLTE-M。
- 携帯電話のエリア外か、自前で網を作りたいか:工場の敷地、農場、山間部などで、自分でゲートウェイを置いて網を作るならLoRaWAN。
- 送るのはごく少量で、頻度も低いか:数十バイトを1日に数回なら、SigfoxやNB-IoTも候補。通信料金、端末の価格、提供エリアで比べる。
- 運用の責任をどこに置くか:免許不要帯は自営できる反面、干渉対策やエリア設計は利用者側の仕事になる。免許帯は事業者がエリアと品質を担う。
この手順は学習用の整理です。実際の選定では、提供エリア、料金体系、端末の認証(技適など)、サービスの継続性もあわせて確認します。
IoT中級ではどこで、どう問われる?
LPWAは、IoTシステム技術検定 中級の出題カテゴリ「センサ/アクチュエータ技術と通信方式(デバイス、ネットワーク、LPWA、プロトコル)」に入ります。公式ページの図では比率が25〜30%で、80問に当てはめると20〜24問程度です(MCPC公式ページ、2026年9月27日確認)。
公式テキスト『IoT技術テキスト 第4版』では、第4章「IoT通信方式」に当たる範囲です(章とカテゴリの対応は当サイトの推定)。方式ごとの出題数は公表されていないため、特定の方式に絞らず、4方式を同じ軸で説明できる状態を目標にしてください。
4択では、次のような問われ方が考えられます(当サイトの予想で、実際の出題を再現したものではありません)。
- 方式と「免許の要否」「標準化・運営の主体」の組合せとして正しいものを選ぶ
- 移動体・音声・自営網など、用途の条件に最も合う方式を選ぶ
- LPWAの特徴として適切でない記述(高速・大容量を得意とする、など)を選ぶ
- LoRa(変調方式)とLoRaWAN(通信プロトコル)の役割を区別する
試験の形式と日程は IoT中級の概要 に、どの章から読むかは IoT中級の勉強方法 にまとめています。
どこで取り違えやすい?つまずき別の見直し表
| 取り違え | 正しい整理 | 見直す手がかり |
|---|---|---|
| LoRaとLoRaWANを同じものと思う | LoRaはチャープ拡散(CSS)に基づく変調方式、LoRaWANはその上のネットワーク仕様でLoRa Allianceが管理 | 「物理層か、プロトコルか」と聞かれたら層で答える |
| LPWAはすべて免許不要だと思う | NB-IoTとLTE-Mは携帯電話の周波数を使う免許帯のLPWA | 3GPPの名前が出たら免許帯のグループ |
| NB-IoTも移動に強いと考える | ハンドオーバーがあるのはLTE-M。NB-IoTはさらに狭い帯域で低速 | 「移動」「音声」の条件はLTE-Mに結びつける |
| SigfoxをLoRa Allianceの規格と混同する | SigfoxはUnaBizが保有する技術で、日本ではKCCSが網を運営 | 方式名と主体をセットで覚える |
| LPWAなら大きなデータも送れると考える | Sigfoxは1メッセージ最大12バイトなど、送信量に強い制約がある方式もある | 問題文の「送る量」「頻度」を必ず読む |
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LoRaWANの構成とクラスは LoRaWANとは、携帯系の2方式の省電力機能は NB-IoTとLTE-Mの違い で詳しく扱います。近距離のメッシュ系と比べたいときは Zigbee・Z-Wave・Wi-SUNの違い へ進んでください。
確認問題1:免許が必要なLPWAの組合せはどれ?
次のうち、携帯電話事業者の免許帯域を使うLPWAの組合せとして、最も適切なものはどれか。
- SigfoxとLoRaWAN
- LoRaWANとNB-IoT
- NB-IoTとLTE-M
- LTE-MとSigfox
正解:3。NB-IoTとLTE-Mは3GPPで標準化され、携帯電話の周波数(ライセンスバンド)で提供されます。
1は、2方式とも日本では免許不要の920MHz帯を使うため誤りです。2と4は、免許不要の方式(LoRaWAN・Sigfox)が1つずつ混ざっているため誤りです。「3GPPで決めた方式かどうか」で2グループに分けると迷いません。
確認問題2:走行中のトラックから位置を送るならどれ?
走行中の配送トラックから、数分おきに位置情報を送りたい。通信中に基地局をまたいでも接続を保つことを最も重視する場合、適切な選択はどれか。
- ハンドオーバーに対応したLTE-Mを使う
- 帯域がより狭いNB-IoTを使う
- 自営ゲートウェイのLoRaWANを使う
- 1通12バイトまでのSigfoxを使う
正解:1。LTE-Mはハンドオーバー機能を持ち、移動しながらの通信に向きます。
2のNB-IoTは、LTE-Mよりさらに狭い周波数を使い、ハンドオーバー機能を持たないと整理される方式なので、条件に合いません。3のLoRaWANは走行ルート全体に自前のゲートウェイを置く前提が必要で、「基地局をまたいで接続を保つ」根拠にはなりません。4のSigfoxは小さな通知向けの方式で、問題文が重視する移動中の接続維持を満たす根拠がありません。
確認問題3:LPWAの説明として適切でないものは?
LPWAの一般的な説明として、適切でないものはどれか。
- 電池で長期間動かすことを重視して設計されている
- 数km以上の長い距離の通信を想定している
- 動画の常時送信など大容量の用途を得意とする
- 免許不要帯と免許帯の両方の方式が存在する
正解:3。LPWAは速度と送信量を抑える代わりに、省電力と長距離を取った方式群です。動画の常時送信のような大容量の用途は想定していません。
1と2はLPWAの名前(Low Power・Wide Area)どおりの特徴で、適切な説明です。4も、日本では920MHz帯を使う免許不要の方式と、携帯電話の周波数を使う方式の両方があるため適切です。
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よくある質問
LPWAとLTEは何が違いますか?
LTEは高速・大容量を目指す携帯電話の方式です。LTE-MとNB-IoTは同じ3GPPの枠組みの中で、IoT向けに帯域を狭め、省電力とカバレッジを優先した方式です。LTEの仕組みを使うため、携帯事業者の免許帯で提供されます。
ELTRESやZETAも覚える必要がありますか?
日本の免許不要帯LPWAの例として名前が挙がる方式で、ELTRESはソニー、ZETAはZiFiSense社が開発しました(KCCSの解説)。出題範囲に含まれるかは公表されていないため、まず4方式の比較を固め、余裕があれば名前と開発元を確認する程度で足ります。
速度の数値は暗記すべきですか?
規格のバージョンで変わるため、まず桁の感覚(bps級・kbps級・Mbps級)と4方式の大小関係を押さえてください。数値を問われた場合も、Release 13 の値かどうかなど、前提の条件を問題文で確かめてから選びます。
出典・参考
- [1]MCPC IoTシステム技術検定 中級(出題カテゴリと比率。2026年9月27日確認)
- [2]KCCS「LPWAとは」(2026年9月27日確認)
- [3]Sigfox 0G technology(UnaBiz。2026年9月27日確認)
- [4]LoRa Alliance: About LoRaWAN(2026年9月27日確認)
- [5]Semtech: What is LoRa?(2026年9月27日確認)
- [6]3GPP: Standardization of NB-IOT completed(2016年6月。2026年9月27日確認)
- [7]Rohde & Schwarz: LTE-M(2026年9月27日確認)
- [8]Telenor IoT: LTE-M vs NB-IoT(2026年9月27日確認)
- [9]ARIB STD-T108(2026年9月27日確認)
- [10]The Things Network: LoRaWAN Architecture(2026年9月27日確認)
本番と同じペースで腕試し
記事の次は、本番形式の問題で。
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