IoTの用語IoT中級

ノイズとフィルタとは|ローパス・ハイパスとIoT中級

ローパスフィルタとは何かを「どの周波数を通し、どれを落とすか」で整理。ハイパス・バンドパス・バンドストップとの比較表、RC回路のカットオフ周波数の計算、移動平均とメディアンの違いを独自の確認問題3問で確かめます。

最終更新
公開
読了目安
約9分
執筆
ICT模試 編集部

この記事の要点

  • ノイズとは、測りたい信号以外に混じる成分。フィルタは、周波数や値の性質の違いを使って信号とノイズを分ける。
  • ローパスフィルタ(LPF)は低い周波数を通して高い周波数を落とす。ハイパス(HPF)はその逆、バンドパスは特定の帯域だけ通し、バンドストップ(ノッチ)は特定の帯域だけ落とす。
  • RC回路のローパスフィルタのカットオフ周波数は fc=1/(2πRC)。カットオフ周波数では出力の電力が半分(約−3dB)になり、そこから急に0になるわけではない。
  • デジタルでは移動平均(ローパスに近い働き)とメディアンフィルタ(突発的な1点の外れ値に強い)をよく使う。
  • IoT中級では「センサ/アクチュエータ技術と通信方式」(25〜30%、2026年9月27日確認)に当たる。

ノイズとフィルタとは?一言でいうと

ノイズとは、センサの信号に混じる「測りたいもの以外」の成分で、フィルタとは、その成分を周波数や値の性質の違いを手がかりに減らす回路や計算のことです。

IoTデバイスでよく問題になるノイズには、次のようなものがあります。

  • 電源からの雑音(ハム):商用電源の周波数の成分。日本では静岡県の富士川付近を境に、おおむね東日本が50Hz、西日本が60Hz(北海道電力ネットワーク、2026年9月27日確認)。
  • 機器からの電磁的な雑音:モータ、インバータ、無線機などが出す、速く変化する成分。
  • 素子の内部の雑音:センサや増幅器そのものが持つ細かな揺らぎ。
  • 突発的な外れ値:接触不良や一瞬の電波の干渉などで、1点だけ飛び抜けた値が入る。

ノイズの種類によって効くフィルタが違います。「どの周波数にあるか」「一瞬だけか、ずっと続くか」を見分けることが、フィルタを選ぶ出発点です。

フィルタにはどんな種類がある?比較表で見る

周波数で分けるフィルタの比較(当サイトの整理)
種類通すもの落とすものIoTでの使い道の例
ローパスフィルタ(LPF)カットオフより低い周波数高い周波数細かな雑音を減らす。A/D変換の前でエイリアシングを防ぐ
ハイパスフィルタ(HPF)カットオフより高い周波数低い周波数(直流やゆっくりした変化)加速度から重力の成分を除き、振動だけを見る
バンドパスフィルタ(BPF)特定の帯域それより低い・高い周波数設備の特定の回転数に対応する振動だけを見る
バンドストップ(ノッチ)フィルタ特定の帯域以外特定の帯域50Hzや60Hzの電源ハムだけを落とす

← 表は横にスクロールできます →

カットオフ周波数は、フィルタが「通す」と「落とす」を分ける目安の周波数です。この周波数で出力の電力は半分(約−3dB、振幅では約0.71倍)になります。抵抗RとコンデンサCで作るいちばん簡単なローパスフィルタでは、fc=1/(2πRC) で求められ、カットオフより上では周波数が10倍になるごとに約20dBずつ弱くなります。

独自の計算例:R=10kΩ、C=0.1μF なら、RC=10,000×0.0000001=0.001秒です。fc=1/(2×3.14×0.001)=約159Hz になります。

Android の公式ドキュメントでは、加速度センサの値から重力の成分を取り除くために、ハイパスフィルタを使う例が示されています(2026年9月27日確認)。重力のようにゆっくり変わる成分は低い周波数にあたるからです。

移動平均などデジタルの処理は何が違う?

A/D変換した後の数値の列には、計算でフィルタをかけられます。代表的な処理を比べます。

デジタルでの代表的な処理(当サイトの整理)
処理計算得意苦手
移動平均直近のN個の値の平均をとる細かく揺れる雑音をならす(ローパスに近い働き)突発的な外れ値が周りに広がる。Nを大きくすると変化に遅れる
指数移動平均新しい値と前回の結果を一定の割合で混ぜる少ない計算とメモリでならせる混ぜる割合の決め方で遅れが変わる
メディアンフィルタ直近のN個の値の中央値をとる1点だけ飛び抜けた外れ値を消す。急な段差の形を保ちやすい平均より計算が多い。細かな揺れをならす力は移動平均に劣る場合がある

← 表は横にスクロールできます →

独自の数値例:温度の値が 20、21、20、80、21、20 と並び、80 だけが接触不良による外れ値だったとします。80 を中心にした3点の移動平均は (20+80+21)÷3=約40.3 で、外れ値の影響が残ったうえ、隣の点の平均にも80が入って値がゆがみます。同じ3点の中央値は 21 で、外れ値だけがきれいに消えます。

どの処理も、強くかけるほど本当の変化まで消したり遅らせたりします。外れ値や欠けた値の扱いをデータ分析の側から整理した話はデータの前処理とはへ。

フィルタだけに頼らず、ノイズを入れない工夫も効きます。信号線とモータの電源線を離す、シールド線やより線(ツイストペア)を使う、グラウンドの取り方をそろえる、といった配線の対策です。

IoT中級ではどこで問われる?

IoTシステム技術検定 中級の公式ページに示された出題カテゴリのうち、「センサ/アクチュエータ技術と通信方式(デバイス、ネットワーク、LPWA、プロトコル)」25〜30% に当たります(2026年9月27日確認)。この中でノイズとフィルタが何問出るかは公表されていません。

公式テキスト『IoT技術テキスト 第4版』では、第5章「IoTデバイス」に当たる範囲です。章とカテゴリの対応は当サイトの推定で、使っているのは目次の章名だけです。データを整える話は「IoTデータ活用技術」とも重なります。

4択の形としては、当サイトの作問の観点で次のようなものが考えられます(出題の傾向や頻度を示すものではありません)。

  • 目的(重力を除く・電源ハムを落とす・細かな雑音を減らす)に合うフィルタを選ぶ
  • カットオフ周波数の意味や計算についての記述を判断する
  • 移動平均とメディアンフィルタの違いを選ぶ
  • A/D変換の前にかけるべきフィルタを選ぶ

試験の形式はIoTシステム技術検定 中級とはへ。合格基準は公式に非公開です。

取り違えやすい点は?

ノイズとフィルタで間違えやすい点(当サイトの整理)
つまずき正しい整理見分け方
ローパスは低い周波数を落とすと思う低い周波数を「通す(pass)」フィルタ名前の「pass」は通すもの
カットオフ周波数で信号が完全に0になると思う電力が半分(約−3dB)になる目安で、なだらかに弱まる「−3dB」「約0.71倍」の記述
移動平均は外れ値に強いと思う外れ値は平均に入って周りに広がる。1点の外れ値にはメディアンが向く「突発的」「1点だけ」の記述
フィルタは強くかけるほど良いと思う本当の変化まで消えたり、遅れたりする応答の速さも条件にあるか
エイリアシングはA/D変換後のデジタルフィルタで消せると思う標本化した後は区別できない。変換の前にアナログのローパスで落とすフィルタの位置

← 表は横にスクロールできます →

確認問題1:重力を除いて振動だけを見るには?

設備に付けた加速度センサの信号から、ゆっくり変化する重力の成分を取り除き、速く変化する振動の成分だけを取り出したい。最も適切なフィルタはどれか。

  1. 低い周波数を通し、高い周波数を落とすローパスフィルタ
  2. 特定の帯域だけを落とす、バンドストップフィルタ
  3. 高い周波数を通し、低い周波数を落とすハイパスフィルタ
  4. 直近の値の中央値をとって外れ値を消す、メディアンフィルタ

正解:3。重力はほとんど変化しない低い周波数の成分なので、低い周波数を落とすハイパスフィルタで取り除けます。

1 のローパスフィルタは逆に振動を落とし、重力を残します。2 のバンドストップは特定の帯域だけを落とすもので、重力のような直流に近い成分を取り除く目的には合いません。4 のメディアンフィルタは突発的な外れ値を消す処理で、重力の成分は残ります。

確認問題2:カットオフ周波数を計算できる?

抵抗R=1kΩ、コンデンサC=1μFで作ったRCローパスフィルタのカットオフ周波数として、最も近いものはどれか。

  1. 約16Hz
  2. 約159Hz
  3. 約1,000Hz
  4. 約6,283Hz

正解:2。RC=1,000×0.000001=0.001秒なので、fc=1/(2π×0.001)=約159Hzです。

1 は桁を1つ取り違えた値です。3 は2πで割るのを忘れ、1/RCだけを計算した値です。4 は2πで割らずに掛けてしまった値です。

確認問題3:1点だけの外れ値を消すには?

温度の測定値に、接触不良で1点だけ極端に大きな値が混じることがある。周りの値をなるべくゆがめずに、この外れ値を取り除く方法として最も適切なものはどれか。

  1. 直近3点の中央値をとる、メディアンフィルタをかける
  2. 直近3点の平均をとる、移動平均フィルタをかける
  3. 低い周波数を落とす、ハイパスフィルタをかける
  4. 50Hzの成分だけを落とす、ノッチフィルタをかける

正解:1。中央値は1点だけ飛び抜けた値に引っ張られないため、外れ値を消しながら周りの値を保てます。

2 の移動平均は外れ値も平均に入るため、周りの値までゆがみます。3 のハイパスフィルタはゆっくりした変化を落とすもので、温度の本来の値まで消してしまいます。4 のノッチフィルタは電源ハムのような特定の周波数に使うもので、突発的な1点には効きません。

確認問題のあとは何をすればいい?

迷った問題は「消したい成分は低いか高いか、ずっと続くか一瞬か」を先に書き出してください。フィルタの名前は、通すもので名付けられていることを思い出すと取り違えが減ります。

他のカテゴリと混ぜて本番と同じ4択で確かめるなら、登録不要のIoT中級の無料お試し20問で全問の解説まで確認できます。A/D変換の前にローパスが要る理由はA/D変換とサンプリング定理で詳しく扱っています。

よくある質問

アナログのフィルタとデジタルのフィルタはどちらを使えばよいですか?

役割が違うので、両方を使うことが多くあります。エイリアシングを防ぐフィルタはA/D変換の前にアナログで入れる必要があり、変換後の細かな調整や外れ値の除去はデジタルの計算で柔軟に行えます。

移動平均の個数はいくつにすればよいですか?

個数を増やすほど滑らかになりますが、変化への追従が遅れます。測る量がどれくらいの速さで変わるか、どれだけの遅れまで許されるかで決めます。決まった正解の数はありません。

IoT中級でフィルタの計算は出ますか?

公式に示されているのはカテゴリ単位の比率だけで(「センサ/アクチュエータ技術と通信方式」25〜30%、2026年9月27日確認)、計算問題が出るかどうかや問題数は公表されていません。

出典・参考

  1. [1]MCPC IoTシステム技術検定 中級(出題カテゴリと比率、2026年9月27日確認)
  2. [2]北海道電力ネットワーク 日本の周波数(2026年9月27日確認)
  3. [3]Android Developers Motion sensors(重力を除くハイパスフィルタの例、2026年9月27日確認)

本番と同じペースで腕試し

記事の次は、本番形式の問題で。

公式の出題カテゴリの比率どおりに組んだ無料お試しを、登録不要・カード不要で解けます。続きの模試と章別ドリルは買い切りで、月額はかかりません。

IoTシステム技術検定 中級

80問・90分の模試と章別ドリル・¥4,980(税込・買い切り)

IoT中級の無料お試し20問
料金と収録内容を見る →

当サイトは、モバイルコンピューティング推進コンソーシアム(MCPC)とは関係のない個人が運営する非公式の学習教材です。掲載している問題はすべて当サイトのオリジナルで、実際の試験問題・過去問題・再現問題ではありません。試験の日程・受検料・出題範囲は公式サイト(https://www.mcpc-jp.org/license/ )で必ず確認してください。合格を保証するものではありません。合格の目安は当サイトの推定です。技術・制度の記述は「最終確認日」時点のものです。

← 対策記事の一覧へ