この記事の要点
- 第9章は1級のモバイルシステム科目の最初の章で、テキストの目次では5節(9-1〜9-5)です。MCPC の科目範囲の「システム要件定義」に当たります。
- 中心は、何をするか(機能要件)と、どれだけ良くするか(非機能要件)を分けて、数字で合意することです。非機能要件の整理には IPA の「非機能要求グレード」(6大項目・34中項目・116小項目・238メトリクス)が使えます(2026年9月27日確認)。
- 取り違えやすいのは、SLI(測る指標)・SLO(目標値)・SLA(守れなかったときの取り決めを含む合意)の区別と、稼働率 = MTBF ÷(MTBF+MTTR)の計算です。
- テキストの情報は2023年4月末時点です。その後、品質モデルの国際規格 ISO/IEC 25010 が2023年11月に第2版へ改訂され、9つの特性の構成になりました(ISO、2026年9月27日確認)。
第9章は、どの科目のどこに当たる?
1級の公式テキストは『モバイルシステム技術テキスト エキスパート編 第9版』(リックテレコム、2023年7月中旬発行、定価5,060円(税込)、ISBN 978-4-86594-367-2)です。出版社ページに第10版の告知は見当たりません(2026年9月27日確認)。記載内容は2023年4月末時点の情報とテキストにあります。改版の有無は公式発表を確認してください。
テキストの第III部「モバイルシステム」(第9〜12章)が、1級のモバイルシステム科目に当たると当サイトは整理しています。第2〜4章はネットワーク科目、第5〜8章は端末・アプリケーション科目、第1章は出題範囲外と当サイトは判断しています(推定)。
| 章 | 節の数 | システムの一生での位置 |
|---|---|---|
| 第9章 システム要件定義 | 5節 | 作る前に、何をどこまで作るかを決めて合意する |
| 第10章 システム開発 | 5節 | 決めたことを設計・実装・テストする |
| 第11章 システム運用 | 3節 | 動かし続け、障害や攻撃に対処する |
| 第12章 モバイルシステム関連の法制度 | 12節 | 作る・動かす全体を縛るルール |
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MCPC の1級ページでは、モバイルシステム科目の範囲を「システム要件定義、システム開発、システム運用、モバイルシステム関連の法制度」としています。試験は1科目43問・60分の4択で、章ごとの出題数は公式に公表されていません(2026年9月27日確認)。第9章の節は、出版社の目次では「9-1 顧客ニーズの引き出し」「9-2 要件事項の分析」「9-3 要件の定義」「9-4 要件の実現方法」「9-5 提案」です。この記事の論点は、節の見出しと科目範囲の文言、一次資料をもとにした当サイトの整理です。テキストの本文・図表・サンプル問題は使っていません。
2級から、どこが深くなる?
2級のテキスト(第11版)の章見出しには、要件定義・開発・運用・法制度を独立して扱う章はありません(第11章「情報セキュリティ」、第13章「モバイルシステムを利用したアプリケーション」などが近い章です。リックテレコムの目次、2026年9月27日確認)。2級は技術の知識が中心だったのに対し、1級のモバイルシステム科目はシステムを発注・構築・運用する立場での判断が問われる、と当サイトは見ています。
第9章では特に、「モバイルだから決めておかないと後で困ること」を要件に書けるかが論点になります。たとえば、圏外や通信断のときの動き、対応する OS のバージョンの範囲、端末の紛失時の扱い、プッシュ通知が届かないときの代わりの手段などです。
要件定義で押さえる論点は?
| 論点 | 中身 | キーワード |
|---|---|---|
| 要求の獲得 | 利用者・発注者・運用者など立場ごとに要求を引き出し、矛盾を調整する | ステークホルダー・インタビュー・プロトタイプ |
| 機能要件 | システムが何をするか。画面・処理・データ・外部との連携 | ユースケース・業務フロー |
| 非機能要件 | どれだけ速く・止まらず・安全に・長く使えるか。数字で書く | 可用性・性能・セキュリティ・移行性 |
| サービスレベル | 測る指標と目標を決め、守れなかったときの扱いまで合意する | SLI・SLO・SLA |
| 優先順位と追跡 | 要件に優先度を付け、設計・テストまで対応を追えるようにする | MoSCoW・トレーサビリティ |
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非機能要求グレード:IPA は、非機能要求を6大項目(可用性、性能・拡張性、運用・保守性、移行性、セキュリティ、システム環境・エコロジー)、34中項目、116小項目、238メトリクスに体系化しています。さらに、システムが止まったときの社会的な影響の大きさで「ほとんど無い」「限定される」「極めて大きい」の3つのモデルシステムを示し、それぞれにメトリクスのベースとなるレベルを用意しています(IPA の資料、2026年9月27日確認)。自分のシステムに近いモデルを選び、そこからレベルを調整して合意するのが使い方です。
品質の国際規格:ISO/IEC 25010 は製品の品質モデルを定める規格で、2023年11月発行の第2版では、品質モデルが9つの特性(さらに副特性に分かれる)で構成されています。2011年版は廃止(Withdrawn)です(ISO、2026年9月27日確認)。非機能要件の漏れを点検するチェックリストとして使えます。
SLI・SLO・SLA:Google の SRE 本では、SLI を「提供するサービスのレベルのある側面を、注意深く定義した定量的な指標」、SLO を「SLI で測るサービスレベルの目標値または範囲」、SLA を「SLO を満たした(満たせなかった)場合の結果を含む、利用者との明示的または暗黙の契約」と説明しています(2026年9月27日確認)。
稼働率の要件は、どう計算する?
非機能要件の「可用性」は、稼働率の数字で合意することが多い項目です。平均故障間隔(MTBF)と平均修理時間(MTTR)から、稼働率 = MTBF ÷(MTBF + MTTR)で求めます。次の例は当サイトが作った架空の値です。
| 条件 | 計算 | 稼働率 |
|---|---|---|
| MTBF 495時間・MTTR 5時間 | 495 ÷(495+5) | 0.99(99%) |
| MTBF 999時間・MTTR 1時間 | 999 ÷(999+1) | 0.999(99.9%) |
| 30日(720時間)で稼働率99.9%を約束 | 720 × 0.001 | 止まってよい時間は約0.72時間(約43分) |
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稼働率を上げるには、故障を減らす(MTBF を伸ばす)だけでなく、早く直す(MTTR を縮める)方法もあります。監視や自動復旧で MTTR を縮める話は第11章 システム運用へ、直列・並列の組み合わせの計算は1級の計算対策で扱います。
間違えやすい所は?
| 誤解しやすい言い方 | 正しい整理 | 見分け方 |
|---|---|---|
| 「レスポンスを速く」は性能要件として十分 | 「ピーク時に95%の要求を2秒以内」のように、条件と数字で書かないと検証できない | 数字・条件・測り方があるか |
| SLA と SLO は同じもの | SLO は目標値。SLA は、守れなかったときの返金などの取り決めを含む利用者との合意 | 「結果」「取り決め」「契約」の有無 |
| ユーザビリティは非機能要求グレードの大項目 | 大項目は6つ(可用性、性能・拡張性、運用・保守性、移行性、セキュリティ、システム環境・エコロジー)で、ユーザビリティは入っていない | 6つを言えるか |
| モデルシステムは利用者数で選ぶ | 止まったときの社会的な影響の大きさで3つに分ける | 「社会的影響」という言葉 |
| 要件は開発が始まったら変えない | 変わる前提で優先度と変更の手続きを決め、トレーサビリティで影響を追う | 「変更管理」「追跡」 |
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テキストの後に、何が変わった?(2026年9月時点)
テキストは2023年4月末時点の情報です。第9章の要件の決め方に関係する変化のうち、一次資料で確かめたものを挙げます。
- ISO/IEC 25010 の改訂:2023年11月に第2版(ISO/IEC 25010:2023)が発行され、製品品質モデルは9つの特性で構成されています。2011年版は廃止です(ISO、2026年9月27日確認)。
- 非機能要求グレードの位置づけ:IPA のページでは、非機能要求グレードの事業は2009〜2018年度に実施され終了し、資料はアーカイブとして公開されています。最新の完全版は「非機能要求グレード2018」です(2026年9月27日確認)。
- 対応OSの要件に効く外部のルール:Google Play では、2026年8月31日から新規アプリと更新が Android 16(APIレベル36)以上を対象にする必要があります(2026年9月27日確認)。対応する OS の範囲や更新の計画を要件に入れるとき、ストアの要件が前提になります。
- 法令の変化:Web サイトやアプリで利用者の情報を外部に送る場合の外部送信規律(2023年6月16日施行)や、スマホソフトウェア競争促進法(2025年12月18日全面施行)など、要件に反映が要るルールが増えています。詳しくは第12章 法制度の要点へ。
確認問題1:非機能要件はどれ?
(当サイトの独自問題)モバイル業務アプリの要件のうち、非機能要件に当たるものとして、最も適切なものはどれか。
- 平日9時〜18時のサービスの稼働率を99.9%以上とする
- 訪問先で撮った写真を、案件番号に結びつけて登録できる
- 登録した日報を、上司がアプリの画面で承認できる
- 顧客の名前と電話番号で、案件を検索して表示できる
正解:1。稼働率はシステムが「どれだけ止まらずに使えるか」を表す可用性の要件で、非機能要件です。
2:写真を案件に結びつけて登録するのは、システムが何をするかを表す機能要件です。3:日報の承認も業務の処理そのものなので機能要件です。4:条件で検索して表示するのも機能要件です。
確認問題2:稼働率はいくつ?
(当サイトの独自問題)あるサーバの平均故障間隔(MTBF)が495時間、平均修理時間(MTTR)が5時間のとき、このサーバの稼働率として、最も適切なものはどれか。
- 0.95
- 0.98
- 0.99
- 0.995
正解:3。稼働率 = MTBF ÷(MTBF+MTTR)= 495 ÷ 500 = 0.99 です。
1:0.95 は、495時間の稼働に対して約26時間止まる場合の値で、条件と合いません。2:0.98 は、495時間に対して止まる時間が約10時間の場合の値です。4:0.995 は、MTTR を約2.5時間まで縮めた場合の値です。
確認問題3:SLAの説明として適切なものは?
(当サイトの独自問題)SLI・SLO・SLA の説明として、最も適切なものはどれか。
- SLI は、サービスの目標値を利用者と約束するための契約書の名前である
- SLA は、目標を満たせなかった場合の返金などの取り決めを含む、利用者との合意である
- SLO は、障害が起きたときにだけ測る、その場かぎりの指標である
- SLA を決めれば、社内で目標値(SLO)を決める必要はない
正解:2。SLA は、SLO を満たした・満たせなかった場合の結果(返金やサービスクレジットなど)を含む、利用者との合意です。
1:SLI は測る指標そのもので、契約書ではありません。3:SLO は SLI で測る目標値で、障害時だけでなく日常的に測って管理します。4:実際には、SLA より厳しい SLO を社内で持って余裕を作るのが一般的な考え方で、SLO が不要になるわけではありません。
確認問題のあとは、何を解けばいい?
間違えた問題は「それは『何をするか』か『どれだけ良くするか』か」「指標・目標・合意のどれを言っているか」で見直してください。第9章は、言葉の定義を1文で言えれば取れる問題が多い章です。
本番と同じ4択で確かめるなら、登録不要のモバイルシステム科目の無料お試し10問で解説まで読めます。科目ごとの模試と章別ドリルはモバイル1級の対策ページへ。科目全体の進め方はモバイルシステム科目の勉強法、次の章は第10章 システム開発です。
当サイトはMCPCとは関係のない個人運営の非公式教材です。合格を保証するものではありません。公式テキストの本文・図表・巻末のサンプル問題は使っていません。
よくある質問
非機能要求グレードの238メトリクスは覚える必要がありますか?
当サイトでは、メトリクスをすべて覚えるより、6大項目の名前と、3つのモデルシステムが「社会的な影響」で分かれることを押さえるのを優先するようすすめています。章ごとの出題内容は公表されていません。
要件定義の話は、モバイルでなくても同じでは?
考え方の多くは共通です。1級では、通信が切れる・端末が多様・OS の更新が速い・紛失しやすいといったモバイルの条件を、要件としてどう書くかまで考えておくと、選択肢の違いに気づきやすくなります。
アジャイル開発でも要件定義は必要ですか?
必要です。ただし、最初にすべてを固めるのではなく、優先度の高い要件から決めて、動くものを見ながら更新していく進め方になります。スクラムの考え方はアジャイルとスクラムで扱っています。
出典・参考
- [1]リックテレコム『モバイルシステム技術テキスト エキスパート編 第9版』(目次・発行・価格、2026年9月27日確認)
- [2]リックテレコム『モバイルシステム技術テキスト 第11版』(2級の目次、2026年9月27日確認)
- [3]MCPC モバイルシステム技術検定[1級](科目・範囲・形式、2026年9月27日確認)
- [4]IPA 非機能要求グレード 紹介ページ(2026年9月27日確認)
- [5]IPA セミナー資料(非機能要求グレードの6大項目・モデルシステム、2019年3月4日、2026年9月27日確認)
- [6]ISO/IEC 25010:2023 Product quality model(2026年9月27日確認)
- [7]ISO/IEC 25010:2011(Withdrawn、2026年9月27日確認)
- [8]Google SRE Book: Service Level Objectives(2026年9月27日確認)
- [9]Google Play: Target API level requirements(2026年9月27日確認)
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