この記事の要点
- MEMS(Micro Electro Mechanical Systems、微小電気機械システム)は、半導体の加工技術で作る、動く微小な構造と電子回路を組み合わせた部品。可動部の大きさはおおむねマイクロメートル(μm)単位。
- 露光(フォトリソグラフィ)とエッチングで形を削り出し、犠牲層を取り除いて可動部を浮かせる、といった工程で作る。
- 加速度センサ・ジャイロ・気圧センサ・マイクのようなセンサと、微小ミラー(DMD)やインクジェットのノズルのようなアクチュエータの両方がある。
- 小型・低消費電力・量産しやすいことが、電池で動くIoTデバイスに向く理由。
- IoT中級では「センサ/アクチュエータ技術と通信方式」(25〜30%、2026年9月27日確認)に当たる。
MEMSとは?一言でいうと
MEMSとは、半導体チップを作るのと同じ加工技術を使って、ばね・重り・膜・ミラーのような「動く機械の構造」を微小に作り、電子回路と組み合わせた部品です。日本語では微小電気機械システムと呼ばれます。
ふつうの集積回路(IC)は電気の信号だけを扱い、動く部分を持ちません。MEMSは、構造が動いたりたわんだりすることで物理量を検出したり、逆に電気の信号で構造を動かしたりする点が違います。
大きさの目安は、可動部などの部品がおおむね1〜100μm、部品全体でも数十μm〜1mm程度とされます。製品の例では、Bosch Sensortec の BME280(湿度・気圧・温度)はパッケージが2.5×2.5×0.93mm、3つをまとめて1秒に1回測るときの消費電流が標準3.6μAとされています(2026年9月27日確認)。
半導体の加工でどうやって機械の構造を作る?
MEMSは、シリコンの基板の上で、膜を付ける・形を写す・削る、を繰り返して作ります。代表的な流れは次のとおりです(説明を簡単にした当サイトの整理)。
- 成膜:シリコン基板の上に、構造になる膜と、あとで取り除く「犠牲層」の膜を重ねる。
- 露光(フォトリソグラフィ):光を使って、作りたい形のパターンを膜の上に写す。
- エッチング:薬液やガスで不要な部分を削り、ばねや重りの形を残す。
- 犠牲層の除去:下にある犠牲層を溶かして、構造を基板から浮かせ、動けるようにする。
- 回路と組み合わせる:構造の変化を読む回路(ASIC)と一緒にパッケージに収める。
基板の表面に膜を積み重ねて作る方法を表面マイクロマシニング、基板そのものを深く削って作る方法をバルクマイクロマシニングと呼びます。村田製作所は自社の加速度センサについて、シリコン容量型の3D MEMSのセンシング素子とASICを1つのパッケージに収めた構成と説明しています(2026年9月27日確認)。
同じ工程で1枚の基板から大量に作れるため、小さく、安く、特性のそろった部品を量産しやすいのが強みです。これが、電池で長く動かしたいIoTデバイスにMEMSが広く使われる理由です。
MEMSで作られる部品にはどんなものがある?
| 部品 | 動く部分 | 何を何に変えるか | IoTでの使い道 |
|---|---|---|---|
| 加速度センサ | ばねで支えた重り | 重りの変位 → 静電容量の変化 | 傾き・振動・衝撃の検知 |
| ジャイロセンサ | 振動させた構造 | 回転で働くコリオリ力 → 変位 | 回転や姿勢の変化の検知 |
| 気圧・圧力センサ | 薄い膜(ダイアフラム) | 膜のたわみ → 静電容量や抵抗の変化 | 気圧・高さの変化、配管の圧力 |
| マイクロホン | 音で振動する膜 | 膜の振動 → 電気信号 | 異音の検知、音声の入力 |
| DMD(デジタルマイクロミラーデバイス) | 数百万個の微小なミラー | 電気信号 → ミラーの傾き(光の向き) | プロジェクタなどの光の制御 |
| インクジェットのヘッド | インクを押し出す構造 | 電気信号 → インクの吐出 | 印刷 |
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上の4つは物理量を電気信号に変えるセンサ、下の2つは電気信号で構造を動かすアクチュエータです。テキサス・インスツルメンツは、DLP技術の中核であるDMDを、数百万個の微小なミラーで光を高速に制御する素子として説明しています(2026年9月27日確認)。
TDK の ICM-42688-P のように、3軸加速度と3軸ジャイロを1つにまとめた6軸のMEMS部品もあります。加速度とジャイロの違いは加速度・ジャイロ・地磁気センサの違いで、アクチュエータ全体の種類はアクチュエータとはで扱っています。
IoT中級ではどこで問われる?
IoTシステム技術検定 中級の公式ページに示された出題カテゴリのうち、「センサ/アクチュエータ技術と通信方式(デバイス、ネットワーク、LPWA、プロトコル)」25〜30% に当たります(2026年9月27日確認)。この中でMEMSが何問出るかは公表されていません。
公式テキスト『IoT技術テキスト 第4版』では、第5章「IoTデバイス」に当たる範囲です。章とカテゴリの対応は当サイトの推定で、使っているのは目次の章名だけです。
4択の形としては、当サイトの作問の観点で次のようなものが考えられます(出題の傾向や頻度を示すものではありません)。
- MEMSの説明として適切なものを選ぶ
- MEMSで作られる部品の例として適切でないものを選ぶ
- MEMSがIoTデバイスに向く理由を選ぶ
- 製造工程(露光・エッチング・犠牲層)についての記述を判断する
試験の形式はIoTシステム技術検定 中級とはへ。合格基準は公式に非公開です。
取り違えやすい点は?
| つまずき | 正しい整理 | 見分け方 |
|---|---|---|
| MEMSはセンサだけを指すと思う | DMDやインクジェットのヘッドのようなアクチュエータもある | 電気で「動かす」部品かどうか |
| 動く部分がない半導体もMEMSと呼ぶと思う | 動く・たわむ機械の構造を持つことが特徴 | 可動部の有無 |
| 大きさはナノメートル(nm)単位だと思う | 可動部はおおむねμm単位 | 単位の桁を確認する |
| MEMSの素子だけで測定が完結すると思う | 構造の変化を読む回路(ASIC)と組み合わせて使う | 「回路」「パッケージ」の記述 |
| 小さいので量産に向かないと思う | 半導体の工程で1枚の基板からまとめて作れるので量産に向く | 製造方法を問われているか |
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確認問題1:MEMSの説明はどれ?
MEMSの説明として、最も適切なものはどれか。
- 動く部分を持たず、トランジスタだけで構成した集積回路のこと
- 数ナノメートルの分子を並べて作る、化学合成による素子のこと
- 半導体の加工で作る、微小な可動構造と回路を組み合わせた部品のこと
- 金属の歯車とばねを手作業で組み立てた、腕時計のような機構のこと
正解:3。MEMSは、半導体の加工技術で微小な機械の構造を作り、電子回路と組み合わせた部品です。
1 は動く部分を持たないふつうの集積回路の説明です。2 は分子の単位で作る素子の説明で、MEMSの可動部はおおむねμm単位です。4 は手作業で組み立てる機械の説明で、半導体の工程で作るMEMSとは違います。
確認問題2:MEMSの例でないものはどれ?
MEMSで作られる部品の例として、最も適切でないものはどれか。
- ばねで支えた重りの位置の変化から、加速度を測るセンサ
- 数百万個の微小なミラーの傾きで、光の向きを制御する素子
- 薄い膜のたわみを読み取り、気圧の変化を測るセンサ
- 巻線と永久磁石で、工場の設備を回す大きな回転力を出すモータ
正解:4。工場の設備を回す大型のモータは、巻線と磁石を組み立てて作る機械で、半導体の加工で作る微小な構造ではありません。
1 はMEMSの加速度センサ、2 はDMD、3 はMEMSの気圧センサで、いずれもMEMSで作られる部品の例です。
確認問題3:IoTデバイスに向く理由はどれ?
MEMSのセンサがIoTデバイスに広く使われる理由として、最も適切なものはどれか。
- 小型で消費電力が小さく、半導体の工程でまとめて作りやすいから
- 可動部がないため、振動や衝撃の影響をまったく受けないから
- 校正が一切要らず、温度が変わっても出力が変わらないから
- 無線通信の機能を必ず内蔵し、単体でクラウドへ送れるから
正解:1。小型・低消費電力で、同じ工程で大量に作れる点が、電池で長く動かしたいIoTデバイスに合っています。
2 はMEMSには可動部があるので誤りで、強い衝撃には注意が必要です。3 は多くの製品で補正(オフセット・感度・温度の補正)が行われており、「一切要らない」は言い過ぎです。4 の無線通信は別の部品や回路が担うことが多く、「必ず内蔵」は誤りです。
確認問題のあとは何をすればいい?
迷った問題は「動く構造があるか」「半導体の工程で作るか」の2点に戻ると判断しやすくなります。センサとアクチュエータのどちらの例かも、あわせて確かめてください。
他のカテゴリと混ぜて本番と同じ4択で確かめるなら、登録不要のIoT中級の無料お試し20問で全問の解説まで確認できます。センサが電気信号を作る基本はセンサの原理とはで整理しています。
よくある質問
MEMSとマイクロマシンは同じものですか?
ほぼ同じ領域を指して使われることが多い言葉です。試験では、呼び方よりも「半導体の加工技術で作る微小な可動構造と回路の組合せ」という中身で判断すれば問題ありません。
MEMSのセンサは壊れやすいですか?
小さく軽い構造なので、日常の振動には強い製品が多くあります。一方で、仕様を超える強い衝撃や、落下・高温などの条件では特性が変わることがあるため、製品ごとの仕様の範囲で使うことが前提です。
IoT中級でMEMSは何問出ますか?
公式に示されているのはカテゴリ単位の比率だけで(「センサ/アクチュエータ技術と通信方式」25〜30%、2026年9月27日確認)、MEMSの問題数は公表されていません。
出典・参考
本番と同じペースで腕試し
記事の次は、本番形式の問題で。
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