この記事の要点
- IPv4 は 32 ビット(RFC 791、1981年)、IPv6 は 128 ビット(現行の仕様は RFC 8200、2017年)のアドレスを使うインターネットの基本プロトコルです。
- IPv6 のヘッダは 40 バイトの固定長で、ヘッダチェックサムを持たず、断片化は送信元だけが行います。IPv4 との違いはこの3点から押さえると選択肢を切りやすくなります。
- IPv4 のアドレス不足は、プライベートアドレスと NAT(事業者の CGN を含む)でしのぎつつ、デュアルスタック・トンネル・変換の3種類の移行技術で IPv6 へ移っています。
- モバイル2級では出題カテゴリ「ワイヤレス通信の原理とネットワーク技術」(15%)に当たります。記事の最後に独自の確認問題3問を置きました。
IPv4とIPv6とは?一言でいうと何が違う?
IPv4 と IPv6 は、どちらも「インターネットで、データを宛先のアドレスまで届けるためのプロトコル(IP)」です。最大の違いはアドレスの長さで、IPv4 は 32 ビット、IPv6 は 128 ビットです(RFC 791・RFC 8200、確認 2026-09-27)。32 ビットで表せる数は約43億しかなく、端末の爆発的な増加に足りなくなったことが IPv6 の出発点です。
IPv4 の在庫は実際に尽きています。JPNIC によると、IANA で新規に割り振れる IPv4 アドレスは2011年2月3日になくなり、アジア太平洋地域の APNIC でも2011年4月15日に通常の申請で割り振れる在庫がなくなりました(JPNIC、確認 2026-09-27)。
IP はどちらの版も「届ける努力はするが、届いたかの確認はしない」方式です。RFC 791 も、IP には信頼性のある通信の仕組みはなく、確認応答もないと明記しています。届いたかの確認や再送は、上の層の TCP が受け持ちます。
アドレス長・表記・ヘッダはどう違う?比較表で確認
RFC 791(IPv4)、RFC 8200(IPv6)、RFC 4291(IPv6 のアドレス体系)をもとに、4択で比べられやすい項目をまとめました(確認 2026-09-27)。
| 項目 | IPv4 | IPv6 |
|---|---|---|
| 仕様 | RFC 791(1981年9月) | RFC 8200(2017年7月、インターネット標準 STD 86。旧 RFC 2460 を置き換え) |
| アドレス長 | 32ビット | 128ビット |
| 表記 | 8ビットずつ10進数で4つ、ドット区切り(例:192.0.2.1) | 16ビットずつ16進数で8つ、コロン区切り(例:2001:db8::1) |
| ヘッダの長さ | 最小20バイト(オプションで可変) | 40バイトの固定長(追加の情報は拡張ヘッダで) |
| ヘッダチェックサム | あり | なし |
| 断片化(フラグメント) | 経路上のルータも行える | 送信元だけが行う |
| 中継できる回数の上限 | TTL(Time to Live) | Hop Limit |
| ブロードキャスト | あり | なし(マルチキャストで代替) |
| 最小の MTU | 576バイトまでの受信を必須とする | すべてのリンクで1280バイト以上 |
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IPv6 の表記は、各16ビットの先頭の0を省略でき、0が続く区間を「::」で1回だけまとめられます(RFC 4291)。「::」を2回使うと、何個の0を省いたのか決められなくなるためです。RFC 5952 は表記を1通りにそろえるため、先頭の0は必ず省く、「::」はできるだけ長い区間に使う、16ビット1つだけの0には使わない、英字は小文字で書く、と推奨しています(確認 2026-09-27)。
IPv6 のヘッダを固定長にし、チェックサムや途中での断片化をなくしたのは、ルータが1つ1つのパケットを速く処理できるようにするためです。誤りの検出は下の層(データリンク層)や上の層(TCP・UDP)に任せています。
NATと移行技術は、アドレス不足をどう補っている?
IPv4 のアドレス不足をしのぐ代表的な方法が、組織の中だけで使うプライベートアドレスと、それをグローバルアドレスに付け替える NAT です。プライベートアドレスは RFC 1918 で 10.0.0.0/8・172.16.0.0/12・192.168.0.0/16 の3つの範囲が決められています。さらに通信事業者の網の中で多数の利用者に1つのグローバルアドレスを共有させる CGN(キャリアグレード NAT) のために、RFC 6598 で 100.64.0.0/10 が共有アドレス空間として確保されました(確認 2026-09-27)。
ただし NAT は外から内への通信を始めにくくするなど、エンドツーエンドの通信を妨げる面があります。根本的な解決は IPv6 への移行で、その技術は大きく次の3種類に分けられます。
| 種類 | 仕組み | 代表例 |
|---|---|---|
| デュアルスタック | 機器が IPv4 と IPv6 の両方のアドレスを持ち、相手に応じて使い分ける | 多くの端末・網で採用 |
| トンネル | 一方の版のパケットを、もう一方の版のパケットに包んで運ぶ | IPv6 over IPv4 など |
| 変換(トランスレーション) | IPv4 と IPv6 のヘッダを付け替えて相互に通信させる | NAT64+DNS64、464XLAT |
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NAT64(RFC 6146、2011年)は、IPv6 だけを持つ端末が IPv4 のサーバと通信できるようにする変換で、IPv4 の宛先から IPv6 のアドレスを合成する DNS64(RFC 6147)と組み合わせて使います。464XLAT(RFC 6877、2013年)は、端末側の変換(CLAT)と事業者側の変換(PLAT)を組み合わせ、IPv6 だけの網の上で IPv4 しか扱えないアプリも使えるようにする方式で、RFC 自体がモバイル網での利用を想定して書かれています(確認 2026-09-27)。
モバイル網では、3GPP の EPS は Release 8 の最初から IPv4・IPv6・IPv4v6(デュアルスタック)の接続の種類に対応し、IPv6 では接続ごとに /64 のプレフィックスを割り当て、端末がステートレス自動設定でアドレスを作る、と RFC 6459(2012年)が説明しています(確認 2026-09-27)。LTE のコアネットワークはEPCとはで解説しています。
モバイル2級ではどこで、どう問われる?
モバイル2級の出題カテゴリでは「ワイヤレス通信の原理とネットワーク技術」(15%)に当たります(MCPC 公式ページの図で確認、2026年9月時点)。100問なら約15問の枠です。
公式テキスト『モバイルシステム技術テキスト 第11版』の章立てでは、第5章「インターネット基盤技術」の範囲と当サイトは見ています。章とカテゴリの対応は当サイトの推定です。出題の頻度や配点は公表されていないため、以下は4択で問われうる観点を当サイトが整理したものです。
- アドレス長(32ビットと128ビット)と、表記の方法(10進ドット区切りと16進コロン区切り)
- IPv6 の省略表記のルール(先頭の0の省略、「::」は1回だけ)
- ヘッダの違い(固定長40バイト、チェックサムなし、断片化は送信元だけ)
- NAT・プライベートアドレス・CGN の役割
- デュアルスタック・トンネル・変換の区別と、NAT64・464XLAT の使いどころ
どこで取り違えやすい?つまずき別の整理
選択肢で迷ったときに見直す点を、つまずき別にまとめました。
| よくある取り違え | 正しい整理 | 見分けるポイント |
|---|---|---|
| IPv6は64ビットのアドレス | IPv6は128ビット。64ビットはよく使われるプレフィックスの長さ | /64 は前半のネットワーク部 |
| 「::」は何回使ってもよい | 「::」は1つのアドレスで1回だけ | 2回あると0の個数が決まらない |
| IPv6もルータが断片化する | IPv6の断片化は送信元だけが行う | ルータの処理を軽くする設計 |
| IPv6のヘッダにもチェックサムがある | IPv6のヘッダにチェックサムはない | 誤り検出は上下の層に任せる |
| IPv6にもブロードキャストがある | IPv6にブロードキャストはなく、マルチキャストで代替 | RFC 4291 に明記 |
| NATでIPv4とIPv6が通信できる | 通常のNATはIPv4どうしの付け替え。版をまたぐのはNAT64など | 「64」が付くかどうか |
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確認問題1:IPv6のヘッダの説明として正しいのは?
(当サイトの独自問題)RFC 8200 に規定された IPv6 のヘッダについて、最も適切な記述はどれか。
- ヘッダは可変長で、ヘッダチェックサムを持ち、経路上のルータが断片化を行う
- ヘッダは40バイトの固定長で、ヘッダチェックサムを持たず、断片化は送信元だけが行う
- ヘッダは20バイトの固定長で、ヘッダチェックサムを持ち、断片化は受信先だけが行う
- ヘッダは40バイトの固定長で、ヘッダチェックサムを持ち、経路上のルータが断片化を行う
正解:2。IPv6 の基本ヘッダは40バイトの固定長で、ヘッダチェックサムはなく、断片化は送信元だけが行います(RFC 8200)。
1:可変長でチェックサムを持ち、ルータが断片化するのは IPv4 の特徴です。3:20バイトは IPv4 の最小のヘッダ長で、断片化を「受信先だけが行う」ことはありません(受信先は組み立て直す側です)。4:固定長40バイトは正しいものの、チェックサムとルータによる断片化の部分が誤りです。
確認問題2:IPv6アドレスの推奨される表記は?
(当サイトの独自問題)IPv6 アドレス 2001:0db8:0000:0000:0000:0000:0002:0001 を、RFC 5952 の推奨に従って表記したものとして、最も適切なものはどれか。
- 2001:db8::2:1
- 2001:db8::2::1
- 2001:db8:2:1
- 2001:0db8::0002:0001
正解:1。各区間の先頭の0を省き、0が続く4区間を「::」で1回だけまとめると 2001:db8::2:1 になります。
2:「::」を2回使っているため、それぞれ何区間の0を省いたのか決められず、正しい表記になりません。3:「::」を使わずに0の区間を消しているので、8区間に戻せず別のアドレスになってしまいます。4:アドレスとしては同じものを表せますが、先頭の0を省いておらず、RFC 5952 の推奨に合いません。
確認問題3:IPv6だけの網でIPv4のアプリを使う方式は?
(当サイトの独自問題)IPv6 だけで構築したモバイル網の上で、IPv4 しか扱えないアプリも使えるようにするため、端末側の変換と事業者側の変換を組み合わせる方式として、最も適切なものはどれか。
- デュアルスタック
- キャリアグレードNAT(CGN)
- IPv6 over IPv4 トンネル
- 464XLAT
正解:4。464XLAT は、端末側の CLAT と事業者側の PLAT の2か所の変換を組み合わせ、IPv6 だけの網の上で IPv4 の通信を通します(RFC 6877)。
1:デュアルスタックは網と機器が IPv4 と IPv6 の両方を持つ方式で、IPv6 だけの網という前提に合いません。2:CGN は IPv4 のプライベートアドレスを IPv4 のグローバルアドレスに付け替える仕組みで、版をまたぐ変換ではありません。3:IPv6 over IPv4 トンネルは IPv4 の網の上で IPv6 を運ぶ方式で、向きが逆です。
読んだあと、次に何をすればいい?
比較表の「アドレス長・ヘッダ・断片化」と、移行技術の3種類を言えるようになったら、4択で確かめる段階です。モバイル2級の無料お試し20問は登録不要で、公式カテゴリの比率に合わせた問題と全問の解説を確認できます。
IPv6 のアドレスを名前から引く仕組み(AAAA レコード)はDNSの仕組みとは、IP の上で届いたかを確認する層はTCPとUDPの違い、ウェブの通信の世代の違いはHTTP/2とHTTP/3の違いで続けて確認できます。試験全体はモバイル2級の試験概要へ。
よくある質問
IPv6のアドレスはどれくらい多いのですか?
128ビットなので2の128乗通りで、IPv4 の2の32乗(約43億)とは桁違いです。ただし実際にはネットワーク部とインタフェース部に分けて使い、たとえば3GPP の網では接続ごとに /64 のプレフィックスを割り当てるため、「全部を1つずつ端末に配る」わけではありません。
IPv6になればNATは要らなくなりますか?
IPv6 はアドレスが十分にあるので、アドレス不足をしのぐための NAT は基本的に要らなくなります。ただし移行期間は IPv4 の相手と通信する必要があり、NAT64 などの変換は引き続き使われます。「IPv6 なら NAT が一切存在しない」と言い切る選択肢には注意してください。
RFCの番号まで覚える必要がありますか?
どこまで細かく出るかは公表されていません。少なくとも IPv4 は RFC 791、IPv6 は RFC 8200(旧 RFC 2460)という対応は、IP の基本として押さえておくと安心です。移行技術の RFC 番号より、仕組みの違いを優先しましょう。
出典・参考
- [1]MCPC モバイルシステム技術検定 2級(出題カテゴリの図、確認 2026-09-27)
- [2]RFC 791 Internet Protocol(1981年9月、確認 2026-09-27)
- [3]RFC 8200 Internet Protocol, Version 6 (IPv6) Specification(2017年7月、確認 2026-09-27)
- [4]RFC 4291 IP Version 6 Addressing Architecture(確認 2026-09-27)
- [5]RFC 5952 A Recommendation for IPv6 Address Text Representation(確認 2026-09-27)
- [6]RFC 1918 Address Allocation for Private Internets(確認 2026-09-27)
- [7]RFC 6598 IANA-Reserved IPv4 Prefix for Shared Address Space(確認 2026-09-27)
- [8]RFC 6146 Stateful NAT64(確認 2026-09-27)
- [9]RFC 6877 464XLAT(確認 2026-09-27)
- [10]RFC 6459 IPv6 in 3GPP Evolved Packet System(確認 2026-09-27)
- [11]JPNIC IPv4アドレスの在庫枯渇に関して(確認 2026-09-27)
本番と同じペースで腕試し
記事の次は、本番形式の問題で。
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