この記事の要点
- DNS は、ドメイン名と IP アドレスなどの情報を対応付ける、世界中に分散したデータベースと、それを引く仕組みです(基本の仕様は RFC 1034・1035、1987年)。
- 登場人物は3つ。端末の中のスタブリゾルバー、利用者の代わりに調べてキャッシュするフルサービスリゾルバー、ゾーンの情報を持つ権威 DNS サーバーです。
- 調べた結果は TTL の時間だけキャッシュされます。存在しないという答えもキャッシュされます(ネガティブキャッシュ)。
- DNSSEC は改ざんの検出(暗号化はしない)、DNS over TLS / HTTPS は通信の暗号化、と目的が違います。モバイル2級では出題カテゴリ「ワイヤレス通信の原理とネットワーク技術」(15%)に当たります。
DNSとは?一言でいうと何をしている?
DNS(Domain Name System)は「www.example.jp のような名前から、通信に必要な IP アドレスなどの情報を引くための、階層的に分散したデータベースと問い合わせの仕組み」です。人が覚えやすい名前と、機械が使う数値のアドレスをつなぐ役割を持ちます。
基本の仕様は1987年11月の RFC 1034(概念)と RFC 1035(実装)です。RFC 1034 は DNS の大きな構成要素として、名前の空間と資源レコード、ネームサーバー、リゾルバーの3つを挙げています(確認 2026-09-27)。
スマートフォンでアプリを開いたりウェブページを表示したりするたびに、通信の前にこの名前解決が行われています。名前解決が遅いと、その後の通信がどれだけ速くても、表示の始まりが遅れます。
| 役割 | どこにあるか | していること |
|---|---|---|
| スタブリゾルバー | 端末のOSなど | 自分では解決を最後まで行わず、フルサービスリゾルバーに問い合わせを任せる |
| フルサービスリゾルバー(キャッシュDNSサーバー) | 通信事業者・ISP・組織の網など | 利用者の代わりにルートから順に問い合わせ、結果をキャッシュする |
| 権威DNSサーバー | ルート・TLD(.jp など)・各ドメインの管理者 | 自分が管理するゾーンの情報を、ほかに問い合わせずに答える |
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JPRS の用語集は、インターネット接続の設定で「DNS サーバーの IP アドレス」と言う場合、多くはフルサービスリゾルバーを指すと説明しています(確認 2026-09-27)。「DNS サーバー」という言葉が、権威 DNS サーバーとフルサービスリゾルバーのどちらを指しているかを、文脈で見分けることが大切です。
名前解決はどう進む?スタブ・フルサービスリゾルバー・権威サーバーの流れ
端末が www.example.jp の IP アドレスを知りたいとき、キャッシュに何もない状態からの流れを当サイトで簡略化すると次のとおりです。
- アプリの依頼を受けた端末のスタブリゾルバーが、フルサービスリゾルバーに「www.example.jp のアドレスを最後まで調べて」と問い合わせる(再帰問い合わせ)
- フルサービスリゾルバーは、まず自分のキャッシュに答えがあるかを確認する
- なければルートサーバーに問い合わせ、「.jp を管理する権威サーバーはこちら」と紹介を受ける
- .jp の権威サーバーに問い合わせ、「example.jp の権威サーバーはこちら」と紹介を受ける
- example.jp の権威サーバーに問い合わせ、IPv4 なら A レコード、IPv6 なら AAAA レコードで答えを得る
- フルサービスリゾルバーは答えを TTL の間キャッシュし、スタブリゾルバーに返す
| レコード | 持っている情報 | 使われる場面 |
|---|---|---|
| A | IPv4 アドレス(32ビット) | 名前から IPv4 のアドレスを引く |
| AAAA | IPv6 アドレス(128ビット、タイプ値 28) | 名前から IPv6 のアドレスを引く |
| CNAME | 別名に対する正式な名前 | 別名を正式な名前へ導く |
| MX | メールを受け取るサーバー | メールの配送先を決める |
| NS | ゾーンの権威サーバー | 下位のゾーンの権威サーバーを紹介する |
| PTR | アドレスに対応する名前 | 逆引き(アドレスから名前) |
| TXT | 任意の文字列 | 送信ドメイン認証の設定など |
| SOA | ゾーンの管理情報 | ゾーンの始まりと管理用の値 |
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RFC 1034 は、問い合わせの受け方を2つに分けています。サーバーが別のサーバーを紹介して、続きは問い合わせた側に任せる反復(非再帰)問い合わせと、最初に受けたサーバーが相手に代わって最後まで調べる再帰問い合わせです(確認 2026-09-27)。上の流れでは、手順1が再帰問い合わせ、手順3〜5が反復問い合わせです。
ルートサーバーは a から m までの13の名前(識別子)で運用され、その実体は世界の多くの国にある数百台のサーバー群です(IANA、確認 2026-09-27)。「ルートサーバーは世界に13台しかない」という言い方は正確ではありません。13の名前を運用する組織の中には、日本の WIDE プロジェクト(m)も含まれます。
キャッシュとTTLは何のためにある?
毎回ルートから調べ直していたら、名前解決は遅くなり、権威サーバーの負荷も膨大になります。そこでフルサービスリゾルバーは、得た答えをキャッシュして再利用します。どれだけの時間キャッシュしてよいかを決めるのが、各資源レコードに付いている TTL(Time To Live) です。RFC 1034 は TTL を、資源レコードを捨てる前にキャッシュしてよい時間を表すものとし、管理者が値を決めると説明しています(確認 2026-09-27)。
TTL は運用上のトレードオフです。長くすると問い合わせが減って速く・軽くなりますが、サーバーの移転などで情報を変えたときに、古い答えが長く残ります。短くすると変更はすぐ行き渡りますが、問い合わせが増えます。サービスの移転の前に TTL をあらかじめ短くしておくのは、このためです。
「その名前は存在しない」という答えもキャッシュされます。これをネガティブキャッシュと呼び、RFC 2308(1998年)は、その保持時間を SOA レコードの MINIMUM の値と SOA 自身の TTL の小さい方から決めると定めています(確認 2026-09-27)。
| 仕組み | 仕様 | 目的 | しないこと |
|---|---|---|---|
| DNSSEC | RFC 4033 ほか(2005年) | 応答が正しい送り主のもので、改ざんされていないことを検証する | 通信内容の秘匿(暗号化) |
| DNS over TLS(DoT) | RFC 7858(2016年) | TLS で問い合わせと応答を暗号化する(既定は TCP 853番) | 応答の内容が正しいかの検証 |
| DNS over HTTPS(DoH) | RFC 8484(2018年) | 問い合わせと応答を HTTPS のやりとりに載せて暗号化する | 応答の内容が正しいかの検証 |
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RFC 4033 は、DNSSEC がデータの発信元の認証と完全性を加えるものであり、設計上の選択として機密性は提供しない、と明記しています(確認 2026-09-27)。「DNSSEC で問い合わせの内容が盗み見られなくなる」とする選択肢は誤りです。
通常の DNS は UDP と TCP の 53番を使います。RFC 1035 では UDP のメッセージは 512 バイトまでとされていましたが、EDNS(0)(RFC 6891)でより大きな応答を UDP で扱えるようになりました(確認 2026-09-27)。
モバイル2級ではどこで、どう問われる?
モバイル2級の出題カテゴリでは「ワイヤレス通信の原理とネットワーク技術」(15%)に当たります(MCPC 公式ページの図で確認、2026年9月時点)。100問なら約15問の枠です。
公式テキスト『モバイルシステム技術テキスト 第11版』の章立てでは、第5章「インターネット基盤技術」の範囲と当サイトは見ています。章とカテゴリの対応は当サイトの推定です。出題の頻度や配点は公表されていないため、以下は4択で問われうる観点を当サイトが整理したものです。
- スタブリゾルバー・フルサービスリゾルバー・権威 DNS サーバーの役割の区別
- 再帰問い合わせと反復問い合わせの違い
- 資源レコードの種類と用途(A と AAAA、MX、CNAME、PTR など)
- キャッシュと TTL の関係、TTL を長く・短くしたときの影響
- DNSSEC・DoT・DoH の目的の違い(改ざんの検出か、暗号化か)
どこで取り違えやすい?つまずき別の整理
選択肢で迷ったときに見直す点を、つまずき別にまとめました。
| よくある取り違え | 正しい整理 | 見分けるポイント |
|---|---|---|
| 端末がルートから順に自分で調べる | 端末のスタブリゾルバーは、フルサービスリゾルバーに任せる | 最後まで調べるのはフルサービスリゾルバー |
| 権威サーバーが利用者の代わりに調べてキャッシュする | 権威サーバーは自分のゾーンについて答える側。キャッシュして調べるのはフルサービスリゾルバー | 答える側か、調べる側か |
| ルートサーバーは世界に13台 | 13は名前(識別子)の数。実体は数百台のサーバー群 | IANA の説明 |
| IPv6のアドレスもAレコードで引く | IPv6はAAAAレコード(タイプ値28) | Aの4倍の長さでAAAA |
| TTLは短いほど常によい | 短いと変更は早く反映されるが、問い合わせが増える | トレードオフ |
| DNSSECで通信が暗号化される | DNSSECは改ざんの検出。暗号化はDoT・DoH | RFC 4033 に機密性は提供しないと明記 |
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確認問題1:利用者の代わりに名前解決を行うサーバーは?
(当サイトの独自問題)端末からの問い合わせを受け、利用者の代わりにルートサーバーから順に問い合わせて答えを得て、その結果をキャッシュするものとして、最も適切なものはどれか。
- スタブリゾルバー
- 権威DNSサーバー
- フルサービスリゾルバー
- ルートサーバー
正解:3。フルサービスリゾルバーは、再帰問い合わせを受けて利用者の代わりに名前解決を最後まで行い、結果をキャッシュします。
1:スタブリゾルバーは端末の OS などにあり、自分では最後まで解決せずフルサービスリゾルバーに任せる側です。2:権威 DNS サーバーは自分が管理するゾーンについて答える側で、利用者の代わりに調べる役割ではありません。4:ルートサーバーは権威サーバーの一種で、下位のゾーン(TLD)の権威サーバーを紹介します。
確認問題2:TTLの説明として正しいのは?
(当サイトの独自問題)DNS の資源レコードに付けられる TTL の説明として、最も適切なものはどれか。
- 問い合わせがルートサーバーに届くまでに経由できるサーバーの台数の上限
- 権威DNSサーバーがゾーンの情報を更新してから次に更新するまでの間隔の下限
- 端末がフルサービスリゾルバーの応答を待ち、問い合わせを打ち切るまでの時間
- 受け取った資源レコードをキャッシュしてよく、破棄するまでの時間の上限
正解:4。DNS の TTL は、資源レコードを捨てる前にキャッシュしてよい時間を表します(RFC 1034)。
1:経由できる台数の上限という考え方は、IP パケットの TTL(中継回数の上限)と混同した説明です。DNS の TTL は時間です。2:ゾーンの更新間隔を定める値ではありません。3:応答を待つ時間(タイムアウト)はリゾルバー側の設定で、資源レコードの TTL とは別のものです。
確認問題3:改ざんを検出するが暗号化はしない仕組みは?
(当サイトの独自問題)DNS の応答が正しい送り主から改ざんされずに届いたことを検証できるようにする一方、問い合わせや応答の内容の秘匿(暗号化)は提供しない仕組みとして、最も適切なものはどれか。
- DNSSEC
- DNS over TLS(DoT)
- DNS over HTTPS(DoH)
- EDNS(0)
正解:1。DNSSEC はデータの発信元の認証と完全性を加える仕組みで、RFC 4033 は設計上の選択として機密性を提供しないと明記しています。
2・3:DoT と DoH は、問い合わせと応答を TLS や HTTPS で暗号化してのぞき見を防ぐ仕組みで、目的が逆です。4:EDNS(0) は、UDP で扱えるメッセージの大きさを広げるなど DNS を拡張する仕組みで、改ざんの検証そのものの仕組みではありません。
読んだあと、次に何をすればいい?
3つの登場人物と、TTL・DNSSEC の目的を説明できるようになったら、似た用語が並ぶ4択で確かめます。モバイル2級の無料お試し20問は登録不要で、公式カテゴリの比率に合わせた問題と全問の解説を確認できます。
A と AAAA の違いの背景はIPv4とIPv6の違いで確認できます。DNS の応答を使って利用者を近くの配信サーバーへ案内する方式はCDNとは、TXT レコードを使う送信ドメイン認証はDMARCとはで解説しています。試験全体はモバイル2級の試験概要へ。
よくある質問
「DNSサーバー」と言われたら、どのサーバーのことですか?
文脈によって、権威 DNS サーバーとフルサービスリゾルバーのどちらも指します。端末やルーターに設定する「DNS サーバー」は多くの場合フルサービスリゾルバーです。4択では、答える側(権威)か、利用者の代わりに調べる側(フルサービスリゾルバー)かを確かめてください。
TTLの単位や最大値は覚える必要がありますか?
DNS の TTL は秒単位の時間で、RFC 9499 では 0 から 2,147,483,647 までの値とされています。数値の細部がどこまで出るかは公表されていないので、まず「キャッシュしてよい時間」という意味と、長短のトレードオフを優先して押さえましょう。
DNSはUDPだけを使うのですか?
いいえ。問い合わせは UDP が中心ですが、RFC 1035 の時点からゾーン転送や大きな応答には TCP も使います。どちらも 53番です。暗号化する DNS over TLS は TCP の 853番を既定にしています。
出典・参考
- [1]MCPC モバイルシステム技術検定 2級(出題カテゴリの図、確認 2026-09-27)
- [2]RFC 1034 Domain Names - Concepts and Facilities(1987年11月、確認 2026-09-27)
- [3]RFC 1035 Domain Names - Implementation and Specification(1987年11月、確認 2026-09-27)
- [4]RFC 9499 DNS Terminology(2024年3月、確認 2026-09-27)
- [5]RFC 2308 Negative Caching of DNS Queries(確認 2026-09-27)
- [6]RFC 3596 DNS Extensions to Support IP Version 6(確認 2026-09-27)
- [7]RFC 4033 DNS Security Introduction and Requirements(確認 2026-09-27)
- [8]RFC 6891 Extension Mechanisms for DNS (EDNS(0))(確認 2026-09-27)
- [9]RFC 7858 DNS over TLS(確認 2026-09-27)
- [10]RFC 8484 DNS Queries over HTTPS (DoH)(確認 2026-09-27)
- [11]IANA Root Servers(確認 2026-09-27)
- [12]JPRS 用語辞典「ネームサーバー」(確認 2026-09-27)
本番と同じペースで腕試し
記事の次は、本番形式の問題で。
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