この記事の要点
- 両面市場(ツーサイドマーケット)は、性質の違う2つの利用者グループをプラットフォームが仲介し、片方が増えるほどもう片方にとっての価値が上がる 市場のことです。
- この「相手側が増えると自分の得が増える」関係を 間接ネットワーク効果(クロスサイド・ネットワーク効果) と呼びます。
- そのため、片方の利用料を安く(ときに無料に)して参加者を集め、もう片方から収益を得る 非対称な価格設定 がよく見られます。
- IoTでは、機器メーカーとアプリ・サービス提供者、あるいはデータの提供者と利用者をつなぐ IoTプラットフォーム がこの形になりえます。
両面市場とは何か?
両面市場とは、プラットフォームが 2種類の利用者グループ の間を取り持ち、両者の取引や交流を成り立たせている市場です。身近な例では、ゲーム機(ゲームを遊ぶ人とゲームを作る会社)、クレジットカード(カードを使う人と加盟店)、スマートフォンのアプリストア(利用者とアプリ開発者)が挙げられます。
経済学では、ジャン=シャルル・ロシェとジャン・ティロールが2003年の論文で、こうした市場の価格の決まり方を体系的に扱いました。ポイントは、プラットフォームの価値が 自分と同じ側ではなく、反対側に誰がどれだけいるか で決まることです。アプリが多いストアほど利用者が集まり、利用者が多いストアほど開発者が集まります。
ふつうの市場は、売り手と買い手が直接取引し、価格は1つの取引で決まります。両面市場では、プラットフォームが 両側それぞれに価格を付け、その配分で参加者の数が変わる点が違います。
ふつうの市場・片面の網の効果と、何が違う?
混同しやすい3つを比べました(当サイトの整理)。
| 項目 | ふつうの市場(パイプライン型) | 直接ネットワーク効果 | 両面市場(間接ネットワーク効果) |
|---|---|---|---|
| 価値の流れ | 作る→売る の一方向 | 同じ種類の利用者どうし | 2種類の利用者の間を仲介 |
| 価値が上がる条件 | 製品そのものの質 | 同じ側の利用者が増える(例:電話やメッセージアプリ) | 反対側の利用者が増える(例:アプリが増えると端末の価値が上がる) |
| 価格の付け方 | 製品ごとに原価と需要で決める | 利用者全体に同じように付けやすい | 片側を安くし、もう片側から収益を得ることがある |
| 立ち上げの難しさ | 製品ができれば売り始められる | 最初の利用者を集めるのが難しい | 両側がそろわないと価値が出ない(鶏と卵の問題) |
← 表は横にスクロールできます →
両面市場の立ち上げでよく語られるのが 鶏と卵の問題 です。利用者がいなければ提供者は来ず、提供者がいなければ利用者も来ません。片側への補助(無料化・初期費用の肩代わり)や、自社で片側を用意する方法は、この問題を越えるための工夫です。
IoTプラットフォームでは、どう当てはまる?
IoTプラットフォームは、デバイスの接続、データの収集と蓄積、アプリケーションへの提供といった共通の機能をまとめて提供する基盤です。これが 複数の事業者を仲介する形 をとると、両面市場の性質を帯びます。
| プラットフォームの例 | 片側 | 反対側 | 間接ネットワーク効果 |
|---|---|---|---|
| スマートホームの共通基盤 | 家電・センサのメーカー | アプリ・サービスの提供者/利用者 | 対応機器が増えるほどサービスを作る意味が増え、その逆も成り立つ |
| データ流通の基盤 | データを提供する事業者 | データを使う事業者 | データの種類が増えるほど利用者が集まり、利用者が多いほど提供の見返りが増える |
| 産業機器の稼働監視基盤 | 機器メーカー | 保守・分析サービスの提供者 | 接続される機器が増えるほど分析サービスが増える |
← 表は横にスクロールできます →
IoTの業界の構造全体(機器・通信・基盤・サービスの各事業者)は IoTエコシステムとは、サービスで継続的に収益を得る形は IoTビジネスモデルとは で扱っています。両面市場は、その中でも プラットフォームが両側から参加者を集める仕組み を説明する言葉だと位置づけると、整理しやすくなります。
IoT基礎では、どう問われそう?
改訂4版について、出版社の紹介文では両面市場(ツーサイドマーケット)と IoT プラットフォームの事例が挙げられています(インプレス書誌ページ、2026年9月27日確認)。具体的な出題の形は公表されていませんが、基礎の難度では次のような問い方が考えられます(当サイトの推定)。
- 両面市場の定義として正しい記述を選ぶ
- 間接ネットワーク効果の例を選ぶ(直接ネットワーク効果の例と見分ける)
- 片側を無料にする価格の考え方の理由を選ぶ
- IoTプラットフォームのどの参加者が「両側」に当たるかを選ぶ
考え方の力試しには、当サイトの IoT基礎の無料お試し も使えます。
どこで取り違えやすい?
- 直接と間接の取り違え: 同じ側の利用者が増えて価値が上がるのは直接ネットワーク効果です。反対側が増えて価値が上がるのが間接ネットワーク効果で、両面市場の特徴です。
- 「無料の側は損をしている」と考える: 片側を安くするのは、反対側の参加を増やして全体の価値を上げるための配分です。
- 「売り手と買い手がいれば両面市場」と考える: 小売店が仕入れて売るだけなら、ふつうの市場です。プラットフォームが両側を仲介し、両側への価格配分が参加者の数を左右することがポイントです。
- 両面市場=IoTプラットフォームと覚える: IoTプラットフォームでも、自社の機器だけをつなぐ基盤は両面市場になりません。
確認問題1:両面市場の定義
(当サイトの独自問題)両面市場(ツーサイドマーケット)の説明として、最も適切なものはどれか。
- 1つの企業が部品の調達から販売までを自社だけで行う市場
- 同じ製品を複数の国で異なる価格で販売する市場
- 売り手が1社しかおらず、価格を自由に決められる市場
- 基盤が2種類の利用者を仲介し、片方が増えると他方の価値が上がる市場
正解:4。両面市場は、2種類の利用者の間を仲介し、両者の間に間接ネットワーク効果がはたらく市場です。
1:垂直統合の説明です。2:国ごとの価格差別の説明です。3:独占の説明です。
確認問題2:間接ネットワーク効果の例
(当サイトの独自問題)間接ネットワーク効果の例として、最も適切なものはどれか。
- メッセージアプリの利用者が増えるほど、連絡できる相手が増えて各利用者の便利さが上がる
- 工場の生産量を増やすほど、製品1個あたりの製造コストが下がる
- スマートホーム基盤に対応する機器が増えるほど、その基盤向けにサービスを作る事業者が増える
- 同じ部品を大量に仕入れると、仕入れ単価が下がる
正解:3。機器(片側)が増えることで、サービス提供者(反対側)にとっての価値が上がっており、間接ネットワーク効果の例です。
1:同じ側の利用者どうしの効果で、直接ネットワーク効果の例です。2・4:規模の経済の例で、ネットワーク効果ではありません。
確認問題3:片側を無料にする理由
(当サイトの独自問題)両面市場のプラットフォームが、一方の利用者の料金を無料にすることがある理由として、最も適切なものはどれか。
- 法律で、どちらか片側を必ず無料にすることが義務づけられているため
- 無料にした側の参加者を増やし、反対側の参加者にとっての価値を高めるため
- 無料にした側から得たデータを、本人の同意なく販売するため
- 両側から料金を取ると、通信の速度が遅くなるため
正解:2。片側の参加を増やすことで反対側の価値が上がり、反対側から収益を得やすくなります。
1:そのような一般的な義務はありません。3:個人データを同意なく販売することは個人情報保護の観点で問題があり、無料化の理由の説明として不適切です。4:料金と通信速度には関係がありません。
よくある質問
プラットフォームビジネスと両面市場は同じですか?
重なりは大きいですが同じではありません。プラットフォームビジネスは広い言葉で、2種類以上の利用者を仲介し、間接ネットワーク効果がはたらく場合を両面市場(3種類以上なら多面市場)と呼ぶと整理できます。
両面市場で勝つ企業が1社に集まりやすいのはなぜですか?
参加者が多いプラットフォームほど反対側にとっての価値が高いため、参加者がさらに集まる循環が起きやすいからです。ただし、複数のプラットフォームに同時に参加しやすい市場では、1社に集まりにくくなります。
IoT中級でも出ますか?
出題の範囲は公表の範囲でしか分かりません。ビジネスモデルの考え方は中級でも扱われる分野なので、概念として押さえておいて損はありません。
出典・参考
本番と同じペースで腕試し
記事の次は、本番形式の問題で。
公式の出題カテゴリの比率どおりに組んだ無料お試しを、登録不要・カード不要で解けます。続きの模試と章別ドリルは買い切りで、月額はかかりません。
あわせて読みたい
当サイトは、モバイルコンピューティング推進コンソーシアム(MCPC)とは関係のない個人が運営する非公式の学習教材です。掲載している問題はすべて当サイトのオリジナルで、実際の試験問題・過去問題・再現問題ではありません。試験の日程・受検料・出題範囲は公式サイト(https://www.mcpc-jp.org/license/ )で必ず確認してください。合格を保証するものではありません。合格の目安は当サイトの推定です。技術・制度の記述は「最終確認日」時点のものです。