この記事の要点
- 動画コーデックは、映像を圧縮(符号化)し、再生時に元に戻す(復号)方式のこと。MP4やWebMのような「コンテナ(入れ物)」とは別物です。
- H.264(初版2003年5月)→H.265/HEVC(初版2013年4月)→H.266/VVC(初版2020年8月)は、ITU-TとISO/IECが共同で作った規格の系列です。
- AV1は、2015年設立のAlliance for Open Media(AOMedia)が2018年に公開した方式で、ロイヤリティフリーの特許方針を掲げる点が対比になります。
- モバイル2級では「モバイルインターネットとモバイルコンテンツ技術」(公式ページの図で20%)の範囲です。規格名と策定団体、コーデックとコンテナの組合せを取り違えないことが要点です。
動画コーデックとは?一言でいうと何をするもの?
動画コーデックは、映像データを小さく圧縮する「符号化(エンコード)」と、再生のために元の映像に戻す「復号(デコード)」の方式をまとめた呼び名です。coder と decoder を合わせた造語で、H.264 や AV1 がその代表です。
圧縮が必要な理由は、非圧縮の映像があまりに大きいからです。当サイトの計算例として、フルHD(1920×1080画素)、1画素あたり平均12ビット(8ビット・色差を間引いた4:2:0形式)、毎秒30フレームの映像を考えると、1920×1080×12×30 ≒ 約7億4,600万ビット、つまり約750Mbit/sになります。スマホの回線でこのまま送るのは現実的ではありません。
そこで動画コーデックは、次のような工夫を組み合わせて、見た目の劣化をなるべく抑えながらデータ量を大きく減らします。多くの動画コーデックは元のデータに完全には戻らない非可逆圧縮です。
- フレーム内予測:同じ画面の中で、周りの画素から似た部分を予測して差分だけを記録する
- フレーム間予測(動き補償):前後のフレームとの違い(動いた量)だけを記録する
- 変換と量子化:人の目に目立ちにくい細かな成分を粗く表し、情報量を削る
- エントロピー符号化:現れやすい値ほど短い符号で表し、最後にもう一段詰める
フレーム間予測に関わる用語として、他のフレームを参照せずに単独で復号できるIフレーム、前のフレームを参照するPフレーム、前後のフレームを参照できるBフレームがあります。Iフレームはデータ量が大きい代わりに、途中から再生を始める起点になります。
音声にも同じ考え方の音声コーデックがあります。たとえば Opus は IETF の RFC 6716(2012年9月)で定義された方式で、通話から音楽まで6〜510kbit/sの幅で使えるよう設計されています。動画ファイルは「映像コーデック+音声コーデック」の組合せでできている、と押さえておくと整理しやすくなります。
H.264・H.265・H.266・AV1は何が違う?
主な動画コーデックを、策定した団体と初版の年で並べます。H.26x の系列は ITU-T(国際電気通信連合の電気通信標準化部門)の勧告番号で、同じ内容が ISO/IEC の規格番号でも発行されています。そのため1つの方式に2つの呼び名があります。
| 方式 | 別名・対応する規格 | 策定 | 初版 | 押さえる点 |
|---|---|---|---|---|
| H.264 | AVC(ISO/IEC 14496-10) | ITU-TとISO/IECの共同 | 2003年5月 | 長く広く使われてきた世代。対応する端末・ソフトが多い |
| H.265 | HEVC(ISO/IEC 23008-2) | ITU-TとISO/IECの共同 | 2013年4月 | H.264より高い圧縮を目指した後継 |
| H.266 | VVC(ISO/IEC 23090-3) | ITU-TとISO/IECの共同 | 2020年8月 | 超高精細・HDR・360度映像なども想定した次の世代 |
| AV1 | ― | Alliance for Open Media(2015年設立) | 2018年 | ロイヤリティフリーの特許方針を掲げるオープンな方式 |
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新しい世代ほど「同じ画質をより少ないデータ量で」を目標に改良されてきました。ただし、圧縮の工夫が増えるほど符号化・復号の計算は重くなりがちです。どれだけ減るかは映像の内容や設定で変わるため、「何%削減」という数字を丸暗記するより、世代の順番と、効率と処理負荷のトレードオフを理解しておく方が応用が利きます。
もう一つの対比が利用条件です。H.264・H.265 は実装に特許ライセンスが関わる規格として扱われてきました。一方 AV1 は、AOMedia が「ロイヤリティフリーの特許方針と寛容な著作権ライセンス」を掲げています。Google が開発した VP8・VP9 も、Google が使用料を求めないと表明している方式です。
スマホでは、SoC に組み込まれたハードウェアデコーダが対応している方式だと、少ない電力で滑らかに再生できます。対応していない方式はソフトウェアで復号することになり、電池の減りや発熱が増えます。配信側が新しい方式を使いたくても、受け手の端末の対応状況で選べる方式が決まる、という点も押さえておきましょう。
コンテナとコーデックはどう違う?
取り違えが起きやすいのが「コンテナ」です。コンテナは、圧縮済みの映像・音声・字幕・時刻情報などを1つにまとめるファイルの形式(入れ物)で、圧縮の方式そのものではありません。
| 分類 | 役割 | 例 |
|---|---|---|
| 映像コーデック | 映像を圧縮・復号する方式 | H.264、H.265、H.266、AV1、VP9 |
| 音声コーデック | 音声を圧縮・復号する方式 | AAC、Opus、Vorbis |
| コンテナ(ファイル形式) | 映像・音声・字幕などをまとめて格納する | MP4、WebM、MPEG-2 TS |
| 配信の方式 | ネットワークで小分けに届け、再生させる仕組み | HLS、MPEG-DASH |
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たとえば WebM は Matroska という入れ物を基にした形式で、映像に VP8 または VP9、音声に Vorbis または Opus を組み合わせる、と WebM プロジェクトが説明しています。拡張子が .mp4 のファイルでも、中の映像が H.264 なのか H.265 なのかは別に決まります。「拡張子を見ればコーデックが分かる」わけではありません。
動画を回線に合わせて小分けにして届ける仕組みは、コーデックでもコンテナでもなく配信方式の話です。詳しくはHLSとMPEG-DASHの違いで、配信を支えるCDNの仕組みとあわせて確認できます。撮影側で映像を作る流れはスマホのカメラと画像処理が入口です。
モバイル2級ではどう問われる?
動画コーデックは、モバイル2級の出題カテゴリ「モバイルインターネットとモバイルコンテンツ技術」(公式ページの図で20%、2026年9月27日確認)に当たるテーマです。当サイトの推定では、公式テキスト『モバイルシステム技術テキスト 第11版』の第9章「モバイルインターネットとコンテンツ技術」の範囲に入ります(章とカテゴリの対応は当サイトの推定で、参照しているのは目次の章名だけです)。
公式のサンプル問題は、空欄に語句を入れる形式や、不適切な記述を選ぶ形式の4択です。この形式に当てはめると、動画コーデックでは次のような観点で知識を確かめられる可能性があります。下は当サイトの整理で、出題頻度を示すものではありません(出題頻度は公表されていません)。
- 規格名と別名・策定団体の対応(H.265=HEVC、AV1=AOMedia など)
- 世代の順番(H.264 → H.265 → H.266)と、新しい世代ほど圧縮効率を高める方向であること
- コーデック・コンテナ・配信方式の区別(MP4 や HLS はコーデックではない)
- 圧縮の仕組みの用語(非可逆圧縮、フレーム間予測、Iフレーム)
- 端末側の条件(ハードウェアデコーダの対応と電力消費)
モバイル2級全体の形式や範囲はモバイルシステム技術検定2級とはにまとめています。
どこで間違えやすい?つまずき別の見直し表
覚えたつもりでも選択肢で迷いやすい点を、つまずき方ごとに並べます。
| つまずき | 正しい理解 | 見直しのコツ |
|---|---|---|
| MP4を動画コーデックだと思う | MP4はコンテナ。中身の映像はH.264やH.265など | 「入れ物」と「圧縮方式」を別の列に書く |
| AVCとHEVCの対応を逆に覚える | AVC=H.264、HEVC=H.265 | High Efficiency(高効率)が付く方が新しい |
| AV1をITU-Tの勧告だと思う | AV1はAOMediaが公開した方式 | H.26x以外は策定団体を別に確認する |
| 新しい方式ならどの端末でも再生できると思う | 復号に対応したハードウェアやソフトが必要 | 送る側と受ける側の両方の対応を確かめる |
| ビットレートを下げても画質は同じだと思う | 非可逆圧縮では、データ量を減らすほど劣化が出やすい | データ量と画質はトレードオフと考える |
| Iフレームが前後のフレームを参照すると思う | Iフレームは単独で復号できる。参照するのはPやB | I=Intra(そのフレームの中だけ) |
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確認問題1:H.264の後継として2013年に初版が承認された方式は?
次の文の空欄に入る語句として、最も適切なものはどれか。「ITU-TとISO/IECが共同で策定し、H.264の後継として2013年に初版が承認された動画符号化方式は( )である。」
- 1. AV1
- 2. H.265(HEVC)
- 3. VP9
- 4. MPEG-2 TS
正解は2。H.265 は HEVC とも呼ばれ、ITU-T の勧告としての初版は2013年4月です。ISO/IEC 23008-2 と技術的にそろえた内容で発行されています。
1が誤りなのは、AV1 は AOMedia が2018年に公開した方式で、ITU-T と ISO/IEC の共同規格ではないためです。3が誤りなのは、VP9 は Google が開発した方式で、この系列に属さないためです。4が誤りなのは、MPEG-2 TS は映像や音声をまとめて運ぶコンテナ(伝送用の形式)で、符号化方式ではないためです。
確認問題2:動画の圧縮と格納について不適切な記述は?
動画の圧縮と格納に関する記述として、最も不適切なものはどれか。
- 1. MP4は、映像や音声などをまとめて格納するコンテナ形式である。
- 2. AV1は、Alliance for Open Mediaが公開した映像符号化方式である。
- 3. Iフレームは、他のフレームを参照せずに復号できるフレームである。
- 4. WebMは、ITU-Tが勧告として定めた映像の符号化方式である。
正解は4。WebM は Matroska を基にしたコンテナ形式で、ITU-T の勧告でも、符号化方式そのものでもありません。
1は適切です。MP4 は入れ物で、中の映像には H.264 や H.265 などが使われます。2は適切です。AV1 は2015年設立の AOMedia が2018年に公開しました。3は適切です。Iフレームはそのフレームの情報だけで復号でき、再生を途中から始める起点にもなります。
確認問題3:非圧縮のフルHD映像のビットレートはどのくらい?
1920×1080画素、1画素あたり平均12ビット、毎秒30フレームの非圧縮映像のビットレートに最も近いものはどれか。(仕組みの理解を確かめるための計算問題です)
- 1. 約25Mbit/s
- 2. 約75Mbit/s
- 3. 約750Mbit/s
- 4. 約7.5Gbit/s
正解は3。1920×1080=2,073,600画素、×12ビット=24,883,200ビット(1フレーム分)、×30フレーム=746,496,000ビット/秒で、約750Mbit/sです。
1が誤りなのは、約25Mbitは1フレーム分の量で、1秒あたりに直していないためです。2が誤りなのは、桁を1つ小さく見積もっているためです。4が誤りなのは、桁を1つ大きく見積もっているためです(ビットとバイトを取り違えた場合などに起こります)。この大きさを圧縮で扱える量に減らすのがコーデックの役割です。
3問とも、正解だけでなく他の選択肢が違う理由まで説明できたら、次は本番と同じ4択で範囲全体を試すのがおすすめです。モバイル2級の無料お試し20問は登録不要で、動画以外のカテゴリも含めて解けます。
よくある質問
コーデックとエンコーダは同じ意味ですか?
厳密には違います。コーデックは圧縮と復号の方式(規格)を指すことが多く、エンコーダ・デコーダはその方式を実際に処理するソフトウェアやハードウェアを指します。同じH.264でも、エンコーダの作り方によって画質や処理速度は変わります。
H.265とHEVCは別の方式ですか?
同じ方式です。H.265 は ITU-T の勧告番号、HEVC(High Efficiency Video Coding)は方式の名前で、ISO/IEC 23008-2 としても技術的にそろえた内容で発行されています。H.264 と AVC、H.266 と VVC も同じ関係です。
規格の最新版の年まで覚える必要はありますか?
公式の出題範囲の細かさは公表されていないため断定はできません。当サイトでは、改訂の年より「どの団体の規格か」「どの世代の後継か」「コーデックかコンテナか」の対応を先に固めることをすすめています。年は初版の年(H.264は2003年、H.265は2013年)を目安に押さえれば十分に整理できます。
出典・参考
- [1]ITU-T H.264: Advanced video coding for generic audiovisual services(確認 2026-09-27)
- [2]ITU-T H.265: High efficiency video coding(確認 2026-09-27)
- [3]ITU-T H.266: Versatile video coding(確認 2026-09-27)
- [4]Alliance for Open Media: Our Story(確認 2026-09-27)
- [5]WebM Project: FAQ(確認 2026-09-27)
- [6]RFC 6716: Definition of the Opus Audio Codec(確認 2026-09-27)
- [7]MCPC モバイルシステム技術検定[2級](出題カテゴリ・確認 2026-09-27)
- [8]MCPC 公式テキスト(確認 2026-09-27)
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